広告費をかけても赤字|ROASが合わない時の見直し

「広告を回しているのに、回せば回すほど赤字が膨らむ」——売上は立っているのに、手元のお金が減っていく。この感覚は本当に苦しいですよね。でも、闇雲に予算を増やしたり止めたりする前に、「いくらのROASなら黒字なのか」という基準(損益分岐ROAS)を一度決めるだけで、判断はぐっとシンプルになります。この記事では、赤字の原因をどこで切り分け、媒体ごとに何を見直し、どこで止めるのかを一緒に確認していきましょう。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- まず損益分岐ROAS(黒字になるROASの最低ライン)を計算する。これがないと「赤字かどうか」すら判断できない。
- 赤字の原因はターゲット・キーワード・LP・在庫・単価のどこかに必ずある。広告だけ見ても解決しない。
- 媒体(楽天RPP・Google・Meta)ごとに見直し方は違う。改善が見えない配信は勇気をもって止める判断も必要。
そもそもROASとは?「赤字かどうか」を決める損益分岐ROAS
赤字の話に入る前に、まず物差しをそろえましょう。ROAS(広告費用対効果)は、かけた広告費に対して何倍の売上が返ってきたかを表す指標です。計算はとてもシンプルです。
ROASの計算式
ROAS(%)= 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100
例:広告費10万円で、広告経由の売上が40万円なら
40万円 ÷ 10万円 × 100 = ROAS 400%(広告費1円が4円の売上を生んだ)
ここで多くの方がつまずくのが、「ROAS 400%もあるのに、なぜか手元が苦しい」というケースです。理由はシンプルで、ROASは「売上」しか見ておらず、原価や手数料といった「出ていくお金」を含んでいないから。売上が4倍返ってきても、商品原価や送料、モール手数料を引いたら利益はわずか、ということが普通に起こります。だからこそ必要なのが、「いくらのROASなら黒字になるか」という損益分岐ROASです。
損益分岐ROASの考え方
損益分岐ROAS(%)= 1 ÷ 利益率 × 100
ここでいう利益率は、広告費を引く前の「粗利率(売上から原価・送料・手数料などを引いた割合)」です。
例:粗利率が25%(0.25)の商品なら
1 ÷ 0.25 × 100 = 損益分岐ROAS 400%
つまりこの商品は、ROASが400%を超えてやっと黒字。400%ちょうどはトントン、それ以下は赤字、という意味になります。
言い換えると、「ROASが高い/低い」だけでは赤字かどうかは判断できません。自分の商品の粗利率から損益分岐ROASを出し、実際のROASがそれを上回っているかを見る——これが出発点です。下の表は、粗利率ごとの損益分岐ROASの目安です(数値はあくまで目安で、実際は商材や手数料で変わります)。
| 粗利率(広告費を引く前) | 損益分岐ROAS(黒字の最低ライン) | このROASだと… |
|---|---|---|
| 20% | 500% | 5倍売れて初めてトントン |
| 25% | 400% | 4倍でトントン |
| 33% | 約300% | 3倍でトントン |
| 50% | 200% | 2倍でトントン |
この表を見ると、粗利率の低い商材ほど、求められるROASは高くなるのが分かります。「ROAS 300%なのに赤字」は、粗利率が低ければ当たり前に起こる現象。まずは自分の損益分岐ROASを電卓で出してみてください。これが分かるだけで、「今の広告が赤字なのか黒字なのか」がはっきりします。
広告費が赤字になる5つの原因を切り分ける
損益分岐ROASを下回っている——つまり赤字だと分かったら、次は「なぜ下回っているのか」です。原因は広告の中だけにあるとは限りません。赤字の原因は、ターゲット・キーワード・LP・在庫・単価のどこかに必ず潜んでいます。ひとつずつ切り分けましょう。
① ターゲットのズレ
そもそも買う気のない層に配信していると、クリックはされても買われません。広すぎる配信設定は、無関係な人へのクリック課金で赤字を生みます。
② キーワードのズレ
検索連動広告で「調べているだけ」の語句に出していると、クリック単価だけ高くて転換しません。指名・購買意欲の高い語句に絞れているか。
③ LP(着地ページ)の弱さ
クリックは来ているのに買われない。価格・送料・購入ボタンが見えづらい、訴求が弱いなど、着地ページで離脱している状態です。
④ 在庫・供給の問題
人気商品が品切れ、サイズ欠け、納期が長いなど。せっかく広告で連れてきても買える状態になっていなければ、広告費は捨て金になります。
⑤ 単価・利益構造の問題
そもそも商品単価が低く、粗利が薄い。送料無料ラインや手数料が利益を削っている。構造的に「広告に回す余地がない」ケースです。
切り分けのコツは、「クリックは来ているか」「来た後に買われているか」の2点でまず分けることです。クリックが少なければ①②(届け方の問題)、クリックは来るのに買われないなら③④(受け皿の問題)、どちらも問題ないのに利益が出ないなら⑤(構造の問題)を疑います。下の表で、症状から原因の当たりをつけてみてください。
| 症状(数字の出方) | 疑うべき原因 | まず見る場所 |
|---|---|---|
| 表示は多いがクリックが少ない | ターゲット・キーワード・広告文のズレ | 配信設定・広告文・サムネイル |
| クリックは来るが買われない | LP・在庫・価格訴求の弱さ | 着地ページ・在庫状況 |
| 買われているのに利益が出ない | 単価・利益率(粗利が薄い) | 原価・手数料・送料の内訳 |
| クリック単価が異常に高い | 競合過多・キーワードの広さ | 入札単価・除外キーワード |
媒体別の見直し:楽天RPP・Google・Meta
原因の当たりがついたら、媒体ごとの見直しに進みます。広告は媒体によって「人の来かた」も「効きどころ」も違うので、同じやり方をどこにでも当てはめるとうまくいきません。代表的な3媒体を見ていきましょう。
楽天RPP(検索連動型広告)
楽天のRPPは、すでに楽天市場で「買う気のある人」が検索した結果に出る広告です。母数が買う気のある層なので転換率は出やすい一方、人気キーワードは競合が多く、クリック単価(CPC)が上がりやすいのが赤字の主因になりがちです。見直しの軸は次のとおりです。
- キーワードごとのROASを見て、赤字キーワードを絞る……RPPはキーワード単位でROASが見えます。損益分岐ROASを下回り続ける語句は入札を下げる・外す。
- ビッグワードより複合語……「シャンプー」より「シャンプー 乾燥 ○○用」のように、買う直前の人が打つ複合語のほうが転換しやすく、単価も抑えやすい傾向です。
- 商品ページ(受け皿)の転換率を上げる……RPPの先は商品ページ。ここの転換率が低いと、いくら入札しても赤字が続きます。
Google広告(検索・ショッピング)
Googleは「楽天の外で、悩みや商品を調べている人」を広く拾えるのが強みです。その分、調べているだけ・比較しているだけの「まだ買わない人」も多く混ざります。赤字を減らすには、買う手前の人をどう除外するかがカギです。
- 除外キーワードを設定する……「無料」「使い方」「口コミ」など、買う意図の薄い語句で表示・クリックされていないかを検索語句レポートで確認し、除外していきます。
- コンバージョン計測を必ず入れる……購入まで追えていないと、どの語句が黒字かが分かりません。計測なしの運用は、目隠しでの赤字垂れ流しになりがちです。
- ショッピング広告は商品データの質が命……商品名・画像・価格の情報が整っているほど、関心の高い人に表示されやすくなります。
Meta広告(Instagram・Facebook)
Metaは検索ではなく、「今すぐ探していないけれど、見せれば欲しくなる人」に出会わせる広告です。だからこそ、クリエイティブ(画像・動画)の良し悪しがROASを大きく左右します。検索広告と同じ感覚で運用すると赤字になりやすい媒体です。
- クリエイティブを複数試す……Metaは「見せ方」で結果が大きく変わります。1本に賭けず、訴求の違う数パターンを回して反応の良いものに寄せます。
- すぐに諦めず学習期間を見る……配信初期は機械学習が最適化される前の「ならし運転」。数日で判断せず、ある程度のデータが溜まってから評価します。
- 買う気の薄い層には無理に売り込まない……まず認知・興味を取り、リターゲティングで刈り取る、と役割を分けると無駄打ちが減ります。
🤖 AIで楽にするヒント:赤字キーワード・除外候補を洗い出す
「どの語句を外せばいいか」の判断は、検索語句レポートを眺めるだけでは見落としがち。AIに整理役になってもらうと早いです。検索語句データ(語句・クリック数・費用・コンバージョン数)をコピペして、次のように頼んでみてください。
このデータを見て、
- 費用がかさんでいるのにコンバージョンが ほぼゼロの「赤字語句(除外候補)」
- コンバージョンが取れていて伸ばすべき「勝ち語句」
- 買う意図が薄そうな除外キーワード案 を、それぞれ表で整理してください。
データ:【ここに貼り付け】
出てきた候補を鵜呑みにせず、最終判断は自分で。それでも「どこから手をつけるか」の優先順位づけは一気に早くなります。
「止める」判断:どこまで粘り、どこで撤退するか
広告改善でいちばん難しいのが、「いつ止めるか」です。早く止めすぎれば伸びる芽を摘み、粘りすぎれば赤字を垂れ流す。ここで効いてくるのが、最初に決めた損益分岐ROASという基準です。感情ではなく、数字で線を引きましょう。
⚠ 「赤字でも止めるな」を鵜呑みにしない
「広告は止めると順位やデータが下がるから、赤字でも回し続けるべき」という話を聞くことがあります。これは条件付きで正しいだけです。改善の見込みがある(学習途中・調整余地がある)なら粘る価値はありますが、手を尽くしても損益分岐ROASを大きく下回り続ける配信を、惰性で回し続けるのは別の話。それは投資ではなく、ただの出血です。止める勇気も立派な経営判断です。
判断の目安として、次のように考えると整理しやすくなります。粘る価値があるのは「改善の打ち手がまだ残っている」場合、止めるべきは「打ち手を尽くしても基準を下回り続ける」場合です。
- 粘る……配信が学習期間中/除外・入札・クリエイティブなど未着手の改善余地がある/一部のキーワード・広告セットは黒字で、全体を底上げできそう。
- 一部を止める……赤字のキーワード・広告セットだけを停止し、黒字のものに予算を寄せる。全停止より先に、まずここから。
- 全部止める……主要な改善を一通り試しても損益分岐ROASを大きく下回る/在庫や単価など構造側の問題で、広告では覆せないと分かった。
大事なのは、「全部止める」の前に「赤字の部分だけ止める」という中間の選択肢があることです。広告は「全オンか全オフか」ではありません。黒字の語句・セットを残し、赤字の部分を削るだけで、全体のROASは改善します。
広告とCVR改善は両輪|出稿前に着地ページを整える
ここまで広告側の話をしてきましたが、広告だけをいくらいじっても、着地ページ(LP・商品ページ)が弱ければ赤字は止まりません。広告は「人を連れてくる」役割、着地ページは「連れてきた人に買ってもらう」役割。どちらか一方では成り立たない、まさに両輪です。
たとえばクリック単価を下げる努力を必死にしても、着地ページの転換率(CVR)が半分になれば、必要なROASは届きません。逆に、CVRが1.5倍になれば、同じ広告費でROASも1.5倍になります。広告費をいじるより、受け皿を整えるほうが効く場面は少なくありません。
広告を増やす前に着地ページで確認したいこと
- 価格・送料・納期が、ページ上部ですぐに分かるか
- 「何の悩みが解決するか」が最初の画面で伝わるか
- 購入ボタンが見つけやすく、スマホでも押しやすいか
- レビュー・実績・保証など、不安を消す情報があるか
- 広告の訴求と、着地ページの第一印象がズレていないか
赤字が続くと「広告をどう直すか」に意識が向きがちですが、一度立ち止まって、お客さまが着地したページを自分のスマホで見てみてください。買う気で来た人が、迷わず買える状態になっているか。ここを整えるだけで、同じ広告費のままROASが上向くことはよくあります。CVRの上げ方そのものは、下の関連記事もあわせて参考にしてください。
赤字を黒字に寄せる見直しステップ
「結局、何から手をつければ?」という方のために、赤字に気づいてから黒字に寄せるまでの手順を順番に並べました。上から順に、焦らず進めてください。
-
1. 損益分岐ROASを計算する
自社商品の粗利率から、黒字になる最低ラインのROASを出します。「1 ÷ 利益率 × 100」。これが基準。ここが決まらないと、何を直しても良し悪しが判断できません。
-
2. 実際のROASと突き合わせ、赤字を特定
媒体・キャンペーン・キーワード単位で、実際のROASが損益分岐を上回っているかを確認。どこが赤字を生んでいるのか、犯人を具体的に絞り込みます。
-
3. 原因を5分類で切り分ける
ターゲット・キーワード・LP・在庫・単価のどれが効いているかを判断。「クリックが来ているか/買われているか」の2点でまず大きく分けるのがコツです。
-
4. 赤字部分を止め、黒字部分に寄せる
全停止の前に、赤字のキーワード・広告セットだけを停止。黒字の部分に予算を集中させ、全体のROASを底上げします。あわせて着地ページの改善も着手。
-
5. 測って・寄せてを毎月繰り返す
1か月単位でROASを見直し、効いた施策に寄せ、効かないものを削る。この「測って寄せる」を続けることで、赤字は少しずつ黒字へ近づいていきます。
よくある質問
Q. ROASが何%あれば黒字と考えればいいですか?
A. 「何%なら黒字」という共通の正解はなく、商品の粗利率によって変わります。計算式は「損益分岐ROAS = 1 ÷ 利益率 × 100」。たとえば粗利率25%なら400%、粗利率20%なら500%が黒字の最低ラインです(あくまで目安で、手数料や送料の扱いで前後します)。「ROAS 300%だから良い/悪い」と単独で判断せず、必ず自社の損益分岐ROASと比べてください。同じ300%でも、ある商品では黒字、別の商品では赤字になります。
Q. 赤字でも広告は止めないほうがいいと聞きますが本当ですか?
A. 条件付きで正しい、という理解が正確です。配信が学習途中だったり、除外キーワードの設定やクリエイティブの差し替えなど未着手の改善余地が残っているなら、粘る価値はあります。一方で、主な打ち手を一通り試しても損益分岐ROASを大きく下回り続ける配信を、惰性で回し続けるのは別問題。それは投資ではなく出血です。まずは「全停止」ではなく、赤字のキーワード・広告セットだけを止めて、黒字の部分に予算を寄せるところから試してみてください。
Q. 楽天・Google・Meta、どれから見直すべきですか?
A. いちばん金額が大きく、かつ損益分岐ROASを下回っている媒体からです。出血が大きいところを先に止めるのが、赤字対策の鉄則です。媒体の性格としては、楽天RPPは「すでに買う気のある人」に出る分すぐ効きやすく、Googleは「外で調べている人」を広く拾えて除外設定が肝、Metaは「見せれば欲しくなる人」向けでクリエイティブ勝負です。自社の数字を見て、いちばん損している媒体から手をつけ、改善が見えたら次へ進むのが効率的です。
「やることが多すぎて、手が回らない」——そんな時は。
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