生成AI「事業成果に貢献」は24.1%|EC運営者にとっての意味と今やるべきこと

「AIで作業は速くなったが、売上が変わった実感はない」——現場でよく聞くこの感覚を裏づけるような数字が出てきました。株式会社Macbee Planet(以下、Macbee Planet)は、マーケティング業務に従事する1,037名を対象とした「生成AIの事業成果への貢献調査」の結果を公表しました。生成AIが「業務効率化に貢献」は34.6%、短期・中長期の事業成果への到達は合計24.1%という結果で、効率化のフェーズで止まっている層が最も厚いことが示されています。EC事業者にとって何を意味するのかを整理します。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事実:Macbee Planetの調査(2026年7月28〜29日・有効回答1,037名)で、生成AIの貢献段階は「業務効率化に貢献」34.6%、「マーケティングKPIに貢献」27.3%、「短期的な事業成果」15.5%、「中長期的な事業成果」8.6%。事業成果への到達は合計24.1%でした。一方、今後12か月で投資増・新規投資を予定する回答は88.4%です。
- 意味:「速くなったか」と「売れたか」の間に段差があることが数字で見えた形です。調査では課題の上位に「セキュリティ・法務・運用ルール」32.9%、「AI人材・ノウハウ不足」32.1%が挙がっています。
- アクション:AIで作った成果物にKPIを1つひも付ける/効果測定の入口だけ先に決める/社内ルールを1枚にまとめる、の3点から始めると、効率化止まりから抜けやすくなります。
調査の事実:数字はどうなっているか
調査結果の要点は「効率化には効いているが、事業成果まで届いた実感は4社に1社程度」という分布です。公表されている数値を整理します。
- 調査概要……調査期間は2026年7月28日〜7月29日、インターネット調査。有効回答は1,037名(BtoC企業525名/BtoB企業512名)で、直近12か月に業務で生成AIを利用した担当者が対象です。
- 貢献の段階……業務効率化に貢献34.6%/マーケティングKPIに貢献27.3%/短期的な事業成果に貢献15.5%/中長期的な事業成果に貢献8.6%。短期・中長期の合計が24.1%です。
- 活用領域……文章・資料の作成45.6%、データ分析・顧客理解43.3%、マーケティング戦略・企画立案38.8%が上位。BtoCはクリエイティブ生成(36.4%)や広告配信・運用最適化(28.4%)が相対的に高く、BtoBは文章・資料作成(50.8%)やデータ分析(47.1%)が高い傾向と報告されています。
- 課題の上位……セキュリティ・法務・運用ルールの負担32.9%、AI人材・ノウハウ不足32.1%、AI出力の品質・精度が不安定28.8%、KPI・効果測定の設計が不十分26.6%。
- 投資意向……今後12か月で投資増加・新規投資を予定するのは88.4%。増加幅は「10%以上20%未満」が37.5%で最多でした。
- ROI把握との関係……ROIまで把握している層は投資予定97.0%・20%以上の増額予定59.8%だったのに対し、ROIを把握していない層は投資予定88.2%・20%以上の増額予定30.8%と報告されています。
この調査はEC限定ではありません
対象は「企業でマーケティング業務に従事する担当者」で、EC事業者だけを抽出した調査ではありません。数字をそのまま自店に当てはめるのではなく、傾向を確認する材料として読むのが妥当だと考えています。以下の解釈も、EC運営の現場に置き換えたらどう読めるか、という視点で書いています。
EC運営者にとっての意味
ここからは解釈です。この調査でEC事業者が受け取れる示唆は、「AIの使い方」ではなく「測り方」に課題が寄っているという点にありそうです。
①効率化は達成しやすく、成果は測りにくい。商品説明文の作成やレビュー返信の下書きは、かかった時間が短くなればすぐ実感できます。一方で「AIで書いた説明文のおかげで売れた」は、同じ期間に広告もセールも動いているEC運営では切り分けがむずかしい部分です。効率化34.6%と事業成果24.1%の差は、実力の差というより「測れているかどうか」の差という側面も大きいのではないかと見ています。
②課題の1位が技術ではなく運用ルールだった。「セキュリティ・法務・運用ルール」32.9%が最上位という結果は、ツールの性能よりも社内で安心して使える状態が整っていないことのほうがボトルネックになりやすい、と読むこともできます。ECの現場に置き換えると、顧客情報を含む問い合わせ文をそのまま外部サービスに貼ってよいか、生成した画像を商品ページに使ってよいか、といった判断が担当者ごとにバラついている状態が近いかもしれません。
③ROIを把握している層ほど投資に踏み込んでいる。ROIまで把握している層の投資意向が97.0%という数字は、順番の話として示唆的です。効果が見えているから増やせる、という関係が想像できます。逆に言えば、測る仕組みを持たないまま予算だけ積んでも、翌期に説明できず縮小する流れになりやすいということかもしれません。KPI設計の考え方と同じ話が、AI活用にもそのまま当てはまる形です。
今やるべきこと
大掛かりな整備の前に、今週から始められる範囲を挙げます。
- 成果物1つにKPIを1つだけ付ける……全業務の効果測定は現実的ではないので、まずは対象を絞ります。たとえば「AIで書き直した商品説明文を10商品に適用し、30日後のCVRを前30日と比べる」程度で十分です。数値が動かなくても、測る型が残ること自体に価値があります。
- 削減できた時間を記録する……効率化の効果は放っておくと消えていきます。「レビュー返信が1件5分→2分」のような粗い記録でも、月次で件数を掛ければ社内説明の材料になります。
- 使ってよい範囲を1枚にまとめる……入力してよい情報/だめな情報、生成物を公開する前のチェック担当、使用するサービス名を書いた1枚があるだけで、判断の停滞は減りやすくなります。個人情報や取引先情報の取り扱いは自社の規程と法令の確認が前提になるため、内容の妥当性は必要に応じて専門家にご確認ください。
- 効率化の次の一段を1つ決める……生成AIの使いどころのうち、まだ手をつけていない領域を1つ選びます。レビュー分析や検索キーワードの整理など、出力がそのまま施策の入力になる用途のほうが、事業成果まで線がつながりやすいと感じています。
EC参謀の見立て
この調査でいちばん気になったのは、24.1%という到達率よりも88.4%が投資を増やそうとしている一方で、26.6%が「KPI・効果測定の設計が不十分」と答えているという組み合わせです。測る仕組みが追いつかないまま投資だけ増える状態は、次の期に「結局いくら効いたのか」を説明できなくなりやすい流れだと思います。私たちの現場でも、AI活用そのものより「何をもって成功とするか」を最初に決めていたかどうかで、1年後の定着に差が出ている印象があります。小さくてよいので、測る対象を1つ決めるところから始めるのが現実的ではないでしょうか。
出典
- マーケティング担当者1,037名に聞く「生成AIの事業成果への貢献調査」を実施|株式会社Macbee Planet(PR TIMES)
- 生成AIは事業にどう貢献している?「業務効率化に貢献」が34.6%、「マーケティングKPIに貢献」が27.3%|ネットショップ担当者フォーラム(2026年9月9日)
※数値は出典の公表値です。調査対象はEC事業者に限定されていないため、自店の判断に用いる際は傾向としてご覧ください。最新の内容は必ず一次情報でご確認ください。
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