通販・EC市場が初の15兆円台に|2025年度は5.9%増(JADMA調査)——EC運営者にとっての意味と今やるべきこと

国内の通販・EC市場の「体温」を示す年次データが出ました。公益社団法人日本通信販売協会(以下、JADMA)が2026年8月28日に公表した速報値では、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の通信販売(EC含む)市場の売上高は前年比5.9%増の15兆4,085億円。金額ベースでは前年から8,585億円の増加です。市場は伸びているものの、伸び率は前年度の7.3%から縮小し、成長の主役は規模の大きい事業者に寄っている——中小規模のECがこの数字をどう読むべきかを整理します。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事実:2025年度の通販・EC市場売上高は15兆4,085億円で前年比5.9%増(JADMA・2026年8月28日公表の速報値)。2024年度は14兆5,500億円・7.3%増だったため、伸び率は縮小。
- 意味:市場平均の5.9%は「大手が押し上げた数字」とみられ、中小店舗が同じ伸びを実感できているとは限らない。物価上昇で消費者の価格意識が高まる中、品ぞろえ・利便性で選ばれる店に成長が集まりやすい局面。
- アクション:自店の前年比を5.9%と突き合わせて立ち位置を確認する。価格勝負ではない差別化軸(品ぞろえ・受取体験・信頼)を1つ決める。消費者トラブルの予防(表示・返品規約)を点検する。
発表の事実:2025年度は15兆4,085億円・5.9%増
JADMAが2026年8月28日に公表した「2025年度通販市場売上高調査」の速報値によると、2025年度の通信販売(EC含む)市場の売上高は前年比5.9%増の15兆4,085億円でした。一次情報(プレスリリース)に記載されている内容を、公表されているとおりに整理します。
- 2025年度の売上高は15兆4,085億円……前年比5.9%増。金額ベースでは前年から8,585億円の増加。対象期間は2025年4月〜2026年3月。
- 2024年度は14兆5,500億円・7.3%増(JADMA・2025年8月28日公表)……前年からの増加額は9,900億円。2025年度は伸び率・増加額とも前年度を下回りました。
- 15兆円台は今回が初めて(報道による)……JADMAの調査で市場規模が15兆円を超えたのは初とされています。
- 調査方法……会員375社(調査時点)を対象に実施した「第44回通信販売企業実態調査」の売上部分を先行集計し、各種調査から推計できる有力非会員431社の売上を加えて算出。調査期間は2026年6月25日〜8月17日。推計値は衣料品・雑貨・化粧品・健康食品などの物販が中心。
- けん引役……「大手ECモールや家電量販店などを展開する売上規模の大きい主要企業を中心に、堅調な成長が続いている」とされています。
- 背景……物価上昇を背景に消費者の価格に対する意識が一層高まるなか、「品ぞろえの豊富さや利便性、価格競争力を備えた事業者が市場の拡大をけん引した」とみられる、とJADMAは分析しています。
- 市場構造の変化……AIの活用による業務効率化や顧客体験の向上、越境ECの利用拡大に言及。
- 消費者トラブルの増加……「消費者トラブルも増加が見られる」として、事業者には長期的な信頼を得られる商品・サービスの提供がこれまで以上に求められる、と付記されています。JADMAは2026年4月から「通販トラブル動向月次レポート」の配信を始めています。
数字の読み方の注意
この数値は「速報値」で、会員企業の回答と非会員の推計を合算したものです。経済産業省の電子商取引市場調査(BtoC-EC市場規模)とは調査主体・定義・対象が異なるため、両者の数字を直接比較しないでください。JADMAの数字は物販中心の「通販事業者の売上高」を表すものと理解するのが無難です。
EC運営者にとっての意味
実務への含意は「市場は伸びているが、伸びの配分が偏っている可能性が高い」という点に集約されると考えています。ここからは解釈です。
①5.9%は「平均」であって「自店の期待値」ではない。JADMA自身が「売上規模の大きい主要企業を中心に堅調」と述べている以上、市場全体の伸びは大手に寄っているとみるのが自然です。中小規模の店舗では、前年並み〜数%増でも市場の実感としては妥当な範囲、逆に二桁成長できていれば市場平均を上回っている、という読み方が現実的です。
②「価格競争力」の一言は、中小には重い。物価上昇で消費者の価格意識が高まり、価格競争力のある事業者がけん引した——この分析は、「50円未満の値上げでも4割超が買う商品を変える」という消費者調査とも整合します。ただし価格で大手に張り合うのは難しいため、JADMAが並べて挙げている「品ぞろえの豊富さ」「利便性」のうち、自店が取れる軸を1つ選んで磨くほうが、現場では成果につながりやすい印象があります。専門特化の品ぞろえ、受取方法の選択肢、ギフト対応などが該当します。
③伸び率の縮小は「踊り場」の可能性。7.3%→5.9%という減速は、コロナ禍以降の高成長が落ち着き、通常の成長ペースに戻る過程とみられます。極端な悲観は不要ですが、「市場が伸びているから自店も自然に伸びる」という前提は、2026年度は置きにくくなっているかもしれません。
④「消費者トラブルの増加」は規制の伏線になりやすい。業界団体が公式資料でトラブル増加に触れ、月次レポートまで始めたという事実は、特定商取引法やダークパターン規制の議論と同じ方向を向いています。表示・返品規約・定期購入の条件表示など、信頼に関わる部分の整備は、売上施策と同じ優先度で見ておくのが安全です。
今やるべきこと
今週着手できる範囲で3つに絞ります。
- 自店の2025年度(2025年4月〜2026年3月)の前年比を出し、5.9%と並べる……モール別・自社EC別に分けると、どこが市場より弱いかが見えます。KPIの整理はEC運営のKPI設計を参考に。
- 「価格以外で選ばれる理由」を1つ決めて商品ページに反映する……品ぞろえ(専門性・関連商品の充実)か利便性(受取方法・配送スピード・ギフト対応)のどちらかに寄せる。両方を中途半端に追うより、1軸のほうが伝わりやすい傾向があります。
- 信頼に関わる表示を点検する……特商法表記・返品規約・定期購入の条件・打消し表示。消費者トラブルの増加が公式資料に載った以上、点検の優先度は上げておくのが無難です。法務の判断は最新の公式情報・専門家でご確認ください。
出典
- 通販・EC市場、15兆円規模へ JADMA「2025年度通販市場売上高調査」前年比5.9%増 緩やかな成長基調を維持(公益社団法人日本通信販売協会・2026年8月28日・PDF)
- 統計・出版(公益社団法人日本通信販売協会)
- 2024年度通販・EC市場売上高調査 公表(公益社団法人日本通信販売協会・2025年8月28日)
- 2025年度の通販・EC市場は15.4兆円で5.9%増(ネットショップ担当者フォーラム・2026年9月4日)
※数値はJADMAの公表値(速報値)です。確報で修正される可能性があります。最新の内容は必ず公式資料でご確認ください。
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