ヤマト・佐川・日本郵便の使い分け|EC向け配送サービスの選び方

「送料が利益を食っている気がするけれど、どの配送会社に頼めばいいのか分からない」——開業して最初の壁になりやすいのが配送会社の選択です。ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便は、それぞれ得意なサイズ帯や受取方法の選択肢が違い、どれか1社に決める必要はありません。この記事では、商品サイズ・出荷量・受取体験の3軸で使い分ける考え方を、2026年10月に控える運賃改定も踏まえて順に整理します。特定の会社を推す記事ではなく、自店の商材に合う組み合わせを見つけるための判断材料としてお読みください。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 配送会社は「小型はポスト投函型、中型以上は宅配便型」で分け、サイズ帯ごとに使う会社を決めるのが基本形。1社にまとめるより2社併用の店が現場では多い。
- 出荷量が月100〜300件前後を超えたら法人契約と運賃交渉の検討ライン。それ以下はモールや運送会社の「EC向け定額サービス」を使うのが現実的。
- 2026年10月に日本郵便の運賃改定(10月1日)とヤマトのAmazon向け配送料金改定(10月21日)が控えるため、送料無料ラインと梱包サイズは9月中に再計算しておくと安心。
3社の配送サービスの違いはどこにあるのか
3社の違いは、扱えるサイズ帯の幅・ポスト投函型サービスの種類・受取方法の選択肢の3点に集約されます(2026年9月時点)。運賃そのものは契約条件で大きく変わるため、「どこが安いか」より「自店の商材に合うメニューがあるか」で見るほうが判断を誤りにくくなります。
まず、EC事業者がよく使うサービスをサイズ帯ごとに並べます。サービス名と概要は公式サイトの公開情報に基づく整理で、細かな条件(厚さ・重量の上限、対応地域)は改定されることがあるため、最新は必ず各社公式でご確認ください。
| サイズ帯 | ヤマト運輸 | 佐川急便 | 日本郵便 |
|---|---|---|---|
| 薄型・小型 (ポスト投函) | ネコポス(法人契約等)/クロネコゆうパケット(日本郵便と協業) | 飛脚ゆうパケット便(日本郵便と協業)/飛脚メール便(法人契約) | ゆうパケット/クリックポスト/レターパック/ゆうメール |
| 小型の箱物 | 宅急便コンパクト(専用資材) | 飛脚宅配便(60サイズ〜) | ゆうパック(60サイズ〜) |
| 中型〜大型 | 宅急便(〜200サイズ) | 飛脚宅配便(〜160サイズ)/飛脚ラージサイズ宅配便(170〜260サイズ) | ゆうパック(〜170サイズ) |
| 冷蔵・冷凍 | クール宅急便 | 飛脚クール便 | チルドゆうパック(冷蔵) |
| 受取の選択肢 | 時間帯指定・営業所/コンビニ受取・置き配(EAZY等) | 時間帯指定・営業所受取・置き配(指定場所配送) | 時間帯指定・郵便局/コンビニ受取・置き配(指定場所配達) |
表を見ると分かるとおり、薄型・小型の領域は日本郵便のネットワークを3社が共用する形になっているのが2026年時点の特徴です。ヤマトのクロネコゆうパケット、佐川の飛脚ゆうパケット便はいずれも日本郵便との協業サービスで、最終的な配達は郵便局が担います。つまり小型商材では「どの窓口から出すか(集荷・伝票・システム連携)」の違いが中心で、配達品質そのものは大きく変わらないケースが多い、と理解しておくと選びやすくなります。
「1社で全部」にこだわらなくていい
現場では「小型はA社、宅配便はB社」「通常はA社、繁忙期の溢れた分はB社」のように、2社を併用している店舗が多数派です。1社に集約すると運賃交渉で有利になることはありますが、繁忙期に集荷が回らなかったときの逃げ道がなくなります。出荷量が安定するまでは、併用を前提に考えるのが現実的です。
小型・薄型商品はポスト投函型を軸に選ぶ
厚さ3cm以内・重さ1kg前後までに収まる商品は、ポスト投函型サービスを軸にすると送料を宅配便の半額以下に抑えられる場合が多く、これが小型商材の送料設計の出発点になります(2026年9月時点の目安)。アクセサリー・化粧品の単品・書籍・薄手の衣類・サプリメントなどが該当します。
ポスト投函型は「対面での受け渡しがない」「再配達が発生しない」「日時指定ができない」という共通の性質を持ちます。この性質が自店の商材に合うかどうかが、最初の判断ポイントです。
ゆうパケット系(日本郵便/ヤマト/佐川の協業含む)
A4・厚さ3cm以内・1kg以内が基本枠。法人契約で件数に応じた運賃になります。2026年10月1日からは日本郵便のゆうパケットが厚さ区分を廃止して一律運賃に変わる予定(詳細は速報記事)。3cmぎりぎりの商品ほど影響が出やすい点に注意。
クリックポスト(日本郵便)
Web上で運賃を決済してラベルを印刷する方式で、法人契約なしで始められるのが特徴。追跡あり・全国一律運賃。2026年10月1日から運賃改定と重量上限の拡大(2kgまで)が予定されています。月数十件規模の店舗が最初に使いやすい選択肢です。
ネコポス(ヤマト運輸)
法人契約やモールの配送サービス経由で利用できるポスト投函型。個人・一部契約では順次クロネコゆうパケットへ移行しています。Amazonのマーケットプレイス配送サービスでは2026年10月21日の改定後も沖縄発着を除き税込185円が維持される予定(速報記事)。
レターパック(日本郵便)
専用封筒を買って投函する方式。ライトはポスト投函、プラスは対面受け渡し。全国一律で分かりやすく、ギフトや書類同封にも向く一方、封筒代込みの運賃なので大量出荷ではやや割高になりやすい傾向があります。
選び方の目安を一言でまとめると、月数十件までは契約不要のクリックポスト等、月100件を超えたあたりから法人契約のゆうパケット系・ネコポス系、という流れが現場では一般的です。どのサービスも「厚さ3cm」が分かれ目になりやすいため、梱包後の厚みを実測してから決めてください。
中型・大型商品は宅配便型を「サイズ上限」と「付帯条件」で選ぶ
60サイズ以上の箱物は宅配便型(宅急便・飛脚宅配便・ゆうパック)から選び、判断基準は「自店の主力サイズが各社の上限に収まるか」と「クール・時間帯指定・置き配などの付帯条件が揃うか」の2点です。運賃は3社とも「サイズ(3辺合計)×配達地域」で決まる仕組みが基本で、契約条件で実勢が動きます。
宅配便型で差が出やすいのは、次のような場面です。
・60〜120サイズの一般的な箱物
・ギフトなど対面受け渡しや日時指定が必要な注文
・冷蔵・冷凍が必要な食品
・破損リスクがあり補償を重視したい商品
・160サイズを超える家具・大型雑貨(ラージサイズ対応の会社に絞る)
・厚さ3cm以内に収まるのに箱で送っている
・緩衝材が多すぎてサイズが1段階上がっている
・同梱できる複数注文を別々に発送している
・単価1,000〜2,000円台の商品を宅配便で送料無料にしている
特に注意したいのが梱包サイズの1段階の差です。60サイズと80サイズ、100サイズと120サイズでは運賃が数百円変わることが多く、月300件出荷していれば月数万円〜十数万円の差になります。配送会社を変える前に、箱と緩衝材を見直して1段階小さくできないかを確認するほうが効果が出やすい、というのが現場でよくある結論です。
大型商品は「上限サイズ」で会社が絞られる
170サイズを超える商品は、2026年9月時点で対応できるサービスが限られます(表を参照)。大型雑貨・家具・スポーツ用品などを扱う場合は、運賃より先に「そもそも受けてもらえるか」「集荷に対応してもらえるか」を営業所に確認するところから始めてください。
出荷量に応じた契約の考え方|個人契約から運賃交渉まで
配送会社との契約は出荷量に応じて「契約なし→法人契約→運賃交渉→モール配送サービス併用」と段階的に進めるのが基本形で、月100〜300件前後が最初の切り替えラインの目安です(2026年9月時点・現場の経験則)。最初から交渉に持ち込むのは難しく、実績を積んでから条件を見直す流れになります。
STEP1:契約なしで始める(月〜数十件)
クリックポスト・レターパック・窓口持ち込みの宅配便など、契約不要のサービスで回します。この段階では運賃より「梱包後の実寸と重量のデータを取る」ことが次の交渉材料になります。
STEP2:法人契約を結ぶ(月100件前後〜)
営業所に連絡して掛け払いの法人契約を申し込みます。集荷・伝票発行システム(送り状ソフト)・月締め請求が使えるようになり、作業時間が大きく減ります。運賃表は「基本運賃から何%引きか」の形で提示されることが多く、出荷実績が見えてくるとこの割引率の相談がしやすくなります。
STEP3:運賃交渉と2社併用(月300件前後〜)
月次の出荷件数・平均サイズ・地域分布を資料にして、複数社から条件を取ります。「全量を1社に寄せる代わりに条件を下げる」「小型は別会社に出す」など、組み合わせで総額を下げる交渉が現実的です。ただし交渉で下げすぎると繁忙期の集荷優先度に影響することもあるため、金額だけで決めないのが無難です。
STEP4:モール・カートの配送サービスを併用する
楽天・Amazon・Yahoo!・Shopify等が提供する配送サービス(配送ラベル発行や特約運賃)は、自店単独では届かない条件が適用される場合があります。モール経由の注文はモールの配送サービス、自社ECは自社契約、という分け方をしている店も多く見られます。
交渉の前に揃えておきたい3つの数字
①月間出荷件数の直近3か月推移、②サイズ帯別の構成比(ポスト投函型/60/80/100〜)、③配達地域の分布(関東内が何割か、北海道・沖縄が何割か)。この3つがあると、営業担当者が運賃表を組み立てやすくなり、話が早く進みます。逆にこれが無いと「基本運賃から一律◯%」の提示で終わりやすい印象です。
受取体験で選ぶ|置き配・コンビニ受取・時間帯指定
再配達を減らし、レビューの「届かなかった」「受け取れなかった」を防ぐには、購入者が受取方法を選べるサービスを持つ会社を組み合わせるのが有効で、3社とも2026年時点で置き配やコンビニ・営業所受取に対応しています。細かな対応範囲(対象サービス・地域・事前設定の要否)は会社ごとに異なるため、自店の主力サービスで何が使えるかを確認しておきましょう。
受取体験で確認しておきたいポイントをまとめます。
- 置き配の設定主体……購入者が配送会社のアプリや会員サービスで設定するのか、店側が伝票で指定できるのか。店側で指定できると「置き配希望」の備考対応が楽になります。
- コンビニ・営業所受取の対象サービス……ポスト投函型は対象外のことが多く、宅配便型でも受取場所によってサイズ上限があります。
- 時間帯指定の枠……午前・午後の区分や夜間枠の有無。ギフト商材では細かい枠が求められがちです。
- 追跡番号の連携……モールやカートに追跡番号を自動で流せるか。ここが手作業だと、出荷量が増えたときに問い合わせ対応が増える傾向があります。
- 不在時の保管期間と返送条件……ポスト投函型は投函で完了しますが、宅配便型は保管期限切れで返送されると往復送料が発生します。返送時の運賃負担を規約に書いておくと安心です。
受取方法の選択肢は、送料と同じくらい購入率に影響する要素です。商品ページに「置き配・コンビニ受取に対応」と書けるだけで、受取のハードルを理由に離脱していた層を拾える場合があります。詳しい設計は送料設定の決め方もあわせてご覧ください。
2026年10月の運賃改定と送料設計の見直し
2026年10月には日本郵便の基本運賃改定(10月1日差し出し分から)と、ヤマト運輸のAmazonマーケットプレイス配送サービスの料金改定(10月21日)が予定されており、送料無料ラインと梱包サイズは9月中に再計算しておくのが安全です。改定内容の詳細はそれぞれの速報記事にまとめていますが、配送会社の使い分けに関わる部分だけを抜き出します。
ゆうパケット・クリックポスト・ゆうパック・宅急便・飛脚宅配便がそれぞれ何件か。改定の影響を受ける手段がどれだけあるかを把握します。
「(改定後単価−現行単価)×件数」で概算。日本郵便はゆうパック平均約10%、クリックポスト185円→240円が公表されています(改定前の数値・詳細は速報記事)。
影響の大きい手段の一部を、他社のサービスや別の梱包形態に移せないかを試算します。ただし移した先も改定される可能性があるため、単価差だけで急いで切り替えない判断も必要です。
無料ラインを上げるか、商品価格に織り込むか、送料を実費に近づけるか。改定前に商品ページ・配送設定・店舗ポリシーの表記を揃えて更新します。
改定のたびに配送会社を乗り換えるのは、システム連携や梱包資材の切り替えコストを考えると割に合わないことが多い、というのが現場の感覚です。乗り換えより先に「梱包サイズの圧縮」と「送料無料ラインの再設計」で吸収できる範囲を確認し、それでも足りない部分だけ会社の再配分を検討する順番が現実的です。
商材タイプ別|使い分けの基本パターン
使い分けの基本形は「主力サイズ帯を担う会社を1つ決め、そこから外れるサイズ帯を別の会社で補う」という組み立てで、商材タイプごとにおおよそのパターンがあります。あくまで出発点の例なので、自店の出荷データに合わせて調整してください。
アクセサリー・コスメ・サプリ(薄型中心)
主力=ポスト投函型(ゆうパケット系・クリックポスト・ネコポス系のいずれか)。複数個注文やギフトだけ宅配便型に切り替える。厚さ3cmを超えないパッケージ設計が送料を左右します。
アパレル(薄手〜中厚)
Tシャツ・インナーはポスト投函型、アウター・複数点は60〜80サイズの宅配便型。返品・交換が発生しやすいため、返送時の運賃負担と手段を先に決めておくと運用が安定します。
食品(常温・冷蔵・冷凍)
常温はゆうパック・宅急便・飛脚宅配便のいずれか、冷蔵・冷凍はクール便対応で集荷が安定する会社を軸に。ギフト需要期は日時指定の枠が細かいほうが有利になりやすい傾向があります。
雑貨・家具・大型商品
60〜120サイズは宅配便型、160サイズ超はラージサイズ対応の会社に限定。大型は集荷可否・補償上限・組立配送の要否を営業所に確認してから商品登録するのが安全です。
EC参謀の見立て
配送会社選びは「どこが安いか」の情報収集から始まりがちですが、実際の運賃は契約条件で決まるため、公開情報だけで優劣はつけにくいのが実情です。先に自店の出荷データ(件数・サイズ構成・地域分布)を揃え、それを持って複数社に相談する——この順番にするだけで、提示される条件の質が変わります。もう一つ、運賃改定は今後も続く前提で、梱包サイズを1段階小さくできる設計を先にやっておくと、どの会社を選んでも効き続けます。会社選びより梱包設計、というのが4,000店を見てきた現場の実感です。
よくある質問
Q. 個人事業主で月30件程度ですが、法人契約はできますか?
A. 個人事業主でも法人契約(掛け払いの事業者契約)を申し込むことは可能ですが、出荷件数が少ない段階では割引条件が付きにくく、契約なしのサービスと大差がないケースが多い印象です。月30件前後なら、クリックポストやレターパック、窓口持ち込みで運用しつつ、梱包後の実寸・重量・配達地域のデータを3か月分ためておくのが現実的です。月100件前後が見えてきたら、そのデータを持って営業所に相談すると話が進みやすくなります。契約条件は営業所や地域によって異なるため、詳細は各社にお問い合わせください。
Q. 配送会社を2社使うと、業務が煩雑になりませんか?
A. 送り状の発行を手作業で行っている段階では、確かに手間が増えます。ただ、受注管理システムやモールの配送ラベル機能を使えば、注文の条件(サイズ・配送方法)に応じて送り状の種類を自動で振り分けられるため、2社併用でも作業はほとんど増えません。むしろ「小型はポスト投函型、それ以外は宅配便型」というルールを1つ決めておくほうが、担当者ごとの判断のばらつきが減る傾向があります。出荷が月数百件を超えて手作業が限界になったら、システム化や物流代行の検討時期です。
Q. 運賃改定のたびに送料を上げると、お客さまが離れませんか?
A. 送料の値上げは購入率に影響しやすいため、改定分をそのまま送料に転嫁するのは慎重に判断したいところです。現場では、①梱包サイズを1段階圧縮する、②送料無料ラインを見直して客単価を上げる、③商品価格に一部を織り込む、の3つを組み合わせて吸収し、送料表示そのものはできるだけ据え置く店が多く見られます。送料を上げる場合も、改定日・理由・据え置く条件を事前に告知しておくと、問い合わせや不満が出にくくなる傾向があります。損益の計算方法は送料設定の決め方で詳しく解説しています。
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