EC担当者の81.6%が「ノンコア業務で施策を諦めた」調査結果|EC運営者にとっての意味と今やるべきこと

「やりたい施策があるのに手が回らない」は、感覚ではなく数字で確認された状態でした。シナブルが2026年8月5日に発表した調査で、EC・D2C事業者の担当者1,006人のうち81.6%が「データ整備などのノンコア業務を理由に、本来実施したかった売上アップ施策や顧客対応を諦めた経験がある」と回答しています。さらに68.8%が、業務時間の4割以上をデータの前処理に費やしていました。売上が伸びない理由が施策の質ではなく、施策に着手できていないことにある——その構造を示す調査です。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事実:シナブルの調査(2026年7月1〜3日・EC事業者の担当者/責任者1,006人)で、81.6%が施策や顧客対応を諦めた経験あり。68.8%が業務時間の4割以上をデータ前処理に充てている。
- 意味:諦められた施策の上位がUI/UX改善(51.5%)とパーソナライズ配信(45.0%)で、いずれも売上に直結する領域。作業に押し出されているのは「後回しにしても今日は困らない仕事」だとみられる。
- アクション:自分の1週間の作業を「データを整える時間」と「判断・実行の時間」に分けて計測する。前処理が4割を超えていたら、まず1つだけ自動化か廃止を決める。
調査の事実
調査の概要と主な数値は次のとおりです。数値は発表および報道の記載どおりに整理しています。
- 調査主体……株式会社シナブル。調査名は「EC・D2C事業者における顧客データ分析と業務リソース」に関する調査。
- 調査期間・方法……2026年7月1日〜7月3日、インターネット調査(PRIZMA)。
- 対象・回答数……EC事業を展開する企業に勤務し、自社ECサイトへのツール導入や顧客データ分析・CRMを含む施策の企画・実行に携わる担当者/責任者1,006人。
- ノンコア業務で施策を断念……81.6%が「データ整備などのノンコア業務のために、実施したかった施策や顧客対応を諦めた経験がある」と回答。
- データ前処理の時間……68.8%が業務時間の4割以上を、データの突合・整形・クレンジングに費やしている。うち34.9%は6割〜8割未満を前処理に使っている。
- 諦めた施策の内訳……UI/UXの改善・ページ作り51.5%、パーソナライズされた情報提供45.0%。
- ツール活用の課題……管理画面が複雑37.0%、専門知識の不足35.6%。
なお調査主体はEC向けのMA/CRMプラットフォームを提供する事業者であり、自社サービスの課題領域に沿った設問設計になっている可能性は割り引いて読む必要があります。それを踏まえても、1,006人という規模で8割超という数値が出た点は無視できません。
EC運営者にとっての意味
ここからはEC参謀としての解釈です。この調査が突きつけているのは、ツールが足りないという話ではなく時間の配分が構造的に歪んでいるという話です。
①押し出されているのは「締切のない仕事」ばかり。諦められた施策の上位はUI/UX改善(51.5%)とパーソナライズ配信(45.0%)です。どちらも今日やらなくても誰にも怒られないが、やらないと売上が伸びないタイプの仕事です。一方、受注処理やデータ整形は締切があるので必ず実行される。結果として、締切のある作業が締切のない改善を毎日押し出し続けるという構図が生まれます。これは意志の問題ではなく、優先順位の付き方の問題です。
②前処理が4割を超えるのは、データが分散している証拠。突合・整形・クレンジングに時間がかかるのは、注文データ・顧客データ・広告データ・在庫データが別々の場所にあり、毎回手作業でつなぎ合わせているからだとみられます。作業が遅いのではなく、作業が発生する構造になっているということです。担当者のスキルを上げても、この構造がある限り時間は戻ってきません。
③「ツールを入れたのに使えていない」は珍しくない。管理画面が複雑(37.0%)、専門知識が足りない(35.6%)という回答は、導入したツールが業務時間を増やす側に回っている可能性を示しています。ツールは入れた瞬間に効果が出るものではなく、設定と運用ルールを作りきって初めて時間が浮きます。導入判断のときに、この立ち上げコストを見込んでいたかどうかで結果は分かれます。
④小規模店ほど数字は厳しくなるはず。今回の対象は企業に勤務する担当者ですが、ひとり運営や少人数の店舗では、同じ作業を専任なしでこなしています。8割という数字は、むしろ控えめに見えるというのが現場の実感に近いのではないでしょうか。だからこそ、削る対象を決める作業そのものを予定に入れる必要があります。
今やるべきこと
いきなり大きなツールを検討する前に、自分の時間がどこに消えているかを確認するのが先です。
- 1週間だけ作業を2色に分けて記録する……「データを整える・転記する時間」と「考えて決める・作る時間」の2分類だけで十分です。エクセル1枚、1日3回のメモで足ります。前処理が4割を超えていたら、この調査と同じ状態です。
- いちばん回数が多い転記作業を1つ特定する……時間が長い作業ではなく、回数が多い作業を選びます。週5回の10分作業は、月1回の3時間作業より削る価値があります。
- その1つを「やめる・減らす・自動化する」の順で検討する……最初に問うのは自動化ではなく「それをやめたら誰が困るか」です。答えが出てこない作業は、まず止めてみるのが最速です。止められないものだけ、頻度を下げるか自動化を考えます。
- 諦めた施策を1つだけカレンダーに入れる……UI/UX改善でもメール配信でも構いません。時間ができたらやる、では永久に着手されません。週1回30分でいいので、先に予定として確保します。
- ツール導入は「立ち上げにかかる時間」まで見積もる……管理画面の複雑さと知識不足が課題の上位に来ている以上、導入検討時には初期設定と運用ルール作りの工数も一緒に見積もってください。ここを見ずに入れると、負担が1つ増えるだけになります。
💡 EC参謀の見立て
この調査でいちばん重いのは81.6%という数字ではなく、諦められた施策がUI/UXとパーソナライズという「売上に直結する領域」だったことです。つまり多くの店は、伸ばす方法を知らないのではなく、知っている方法に手をつけられていない。改善策を増やすより、作業を1つ減らすほうが売上に効く局面があるということです。手が回らない状態からの抜け方はひとり運営で手が回らないとき、AIで作業を減らす具体策は生成AIでEC業務を効率化するで扱っています。
出典
※本記事は2026年8月8日時点の公開情報に基づく速報解説です。調査結果の数値は発表・報道の記載に基づきます。最新かつ正確な内容は必ず調査主体の公式発表をご確認ください。
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