日本郵便「ビジネスデジタルアドレス」に入口の緯度経度登録機能|EC運営者にとっての意味と今やるべきこと

配送の非効率は再配達だけではなく、「現地で入口が分からない」という時間にも溜まっています。日本郵便とジオテクノロジーズは2026年7月30日、法人・個人事業主向けサービス「ビジネスデジタルアドレス」に、建物などの入口の緯度経度を登録・編集し、API経由で共有できる機能の提供を開始しました。緯度経度は小数点以下6桁まで保存・表示されます。住所の文字列で伝えていた場所情報を、座標で渡せるようにするという変更です。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事実:2026年7月30日提供開始。ビジネスデジタルアドレス1件につき入口を1つ、緯度経度で登録・編集でき、API経由で取得可能。ジオテクノロジーズの「MapFan API」を活用し、Salesforce AppExchangeの連携サービスにも追加された。
- 意味:効くのは「同一住所に複数棟がある」「入口が複数ある」拠点。倉庫・工場・雑居ビル内の事務所を持つEC事業者ほど恩恵が大きいとみられる。
- アクション:自社の倉庫・事務所がビジネスデジタルアドレスを取得済みか確認し、未登録なら入口の座標を登録する。3PLに委託している場合は委託先の対応状況を確認する。
発表の事実
公表されている内容を、発表および報道の記載に沿って整理します。
- 提供開始日……2026年7月30日。ジオテクノロジーズが8月3日にプレスリリースを公表し、報道は8月4日以降。
- ビジネスデジタルアドレスとは……日本郵便が提供する「デジタルアドレス」の法人・個人事業主向けサービス。会社住所・URL・法人番号などの企業情報を7桁で表現する仕組み。
- 追加された機能……企業が、実際に到着してほしい建物などの入口の緯度経度を登録・編集できる。ビジネスデジタルアドレスごとに1つの入口を登録し、地図上で位置を調整する。
- 精度と取得方法……緯度経度は小数点以下6桁まで保存・表示され、登録データはAPI経由で取得可能。
- 利用技術……ジオテクノロジーズの地図APIサービス「MapFan API」を利用。
- 外部連携……Salesforce AppExchangeの「郵便番号・デジタルアドレス for Salesforce」にも同機能を追加。住所や企業情報とあわせて入口の緯度経度を一元管理できる。
- 想定業種……製造業、倉庫業、不動産・施設管理、小売・飲食事業者などを想定。
- 今後の予定……企業が複数のビジネスデジタルアドレスを取得し、用途別の緯度経度を登録できるよう機能を拡張する予定とされている。
料金体系については、確認できた発表・報道の範囲では明記されていません。導入を検討する場合は日本郵便の公式案内で最新の条件をご確認ください。
EC運営者にとっての意味
ここからはEC参謀としての解釈です。地味な機能追加に見えますが、物流の情報の持ち方が変わる話でもあります。
①「探す時間」は集荷にも発生している。ラストワンマイルのコストというと再配達が語られがちですが、事業者側の拠点でも同じことが起きています。同じ住所に複数の棟が建っている工業団地、入口が裏手にある倉庫、テナントが多い雑居ビル——こうした拠点では、ドライバーが到着してから電話をかけ、担当者が場所を説明する時間が毎回発生します。1回3分でも、週に何十回もあれば無視できない量になります。今回の機能は、その説明を1回きりの登録に置き換えるものです。
②住所文字列から座標へ、という流れの一部。これまで住所は「読んで理解する文字列」でしたが、API経由で座標を渡せるようになると、機械がそのまま使えるデータになります。配送計画の自動化や、到着通知の精度向上といった仕組みは、正確な座標があって初めて成立します。デジタルアドレス自体が7桁の短い識別子であることとあわせて、住所情報を機械可読にしていく取り組みの延長線上にあるとみられます。
③効果が出るかは「受け取る側の実装」次第。ここは冷静に見ておく必要があります。登録した座標は、配送事業者や訪問者のシステムが取り込んで初めて役に立ちます。登録すればすぐに全社の配送が改善する、という性質のものではないと考えるのが妥当です。ただし登録コスト自体は小さく、先に整えておけば対応が広がったときにそのまま効きます。
④BtoB・卸を持つEC事業者には別の使い道がある。納品先の入口情報を自社側で正確に管理できれば、配送業者への指示だけでなく、営業訪問やサンプル配送の効率化にも使えます。Salesforce連携が同時に発表されているのは、この用途を見込んでのことでしょう。取引先マスタに座標を持つという考え方は、EC単体よりも卸・BtoBを併営する事業者に馴染みます。
今やるべきこと
大きな投資は不要です。確認と登録の作業が中心になります。
- 自社拠点のビジネスデジタルアドレスの取得状況を確認する……本社・事務所・倉庫のそれぞれについて、登録済みかどうかを確認します。未取得なら日本郵便の公式案内から手続きの条件を確認してください。
- 「毎回説明している拠点」を洗い出す……ドライバーから電話がかかってくる拠点、道に迷われることが多い拠点を書き出します。その拠点こそが今回の機能で効果が出る場所です。全拠点を一度に整える必要はありません。
- 入口の座標は「実際に荷物を渡す場所」で登録する……建物の代表点ではなく、トラックが停まる搬入口や、実際に受け取る出入口を指定します。登録できるのは1拠点につき1つなので、いちばん頻度が高い入口を選びます。
- 3PL・外部倉庫に委託している場合は委託先に確認する……自社では登録できません。委託先の拠点でも同じ課題があるなら、対応状況を一度聞いてみる価値があります。
- 集荷依頼の定型文を更新する……座標を登録しても、当面は文字での補足が併用されます。「〇〇通り側の搬入口」など、誰が読んでも同じ場所にたどり着く一文をテンプレート化しておきましょう。
💡 EC参謀の見立て
この機能そのもので売上が変わることはありません。ただし「毎回発生する数分の説明」を構造的に消すタイプの改善は、忙しい現場ほど効いてきます。同じ発想で、受注処理や在庫確認にも「毎回説明している/毎回転記している」作業が残っていないかを見直すと、効果は倍になります。作業を減らす順番の考え方は受注処理を効率化する方法、配送まわりの設計はECの送料設定の考え方で扱っています。
出典
- 日本郵便、「デジタルアドレス」に建物入口の登録機能(Impress Watch・2026年8月4日)
- 日本郵便/デジタルアドレスに緯度経度の登録機能、配送・訪問時の負荷軽減へ(LNEWS・2026年8月3日)
- 「ビジネスデジタルアドレス」における緯度経度の登録・共有機能を提供開始(ジオテクノロジーズ株式会社・2026年8月3日)
- 日本郵便株式会社 公式サイト
※本記事は2026年8月9日時点の公開情報に基づく速報解説です。仕様・料金・提供条件は変更される場合があります。最新かつ正確な内容は必ず公式発表をご確認ください。
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