「購入・決済までAIに任せたい」は2.2%|ネットプロテクションズ調査とEC運営者にとっての意味

AIに買い物を任せる流れは、「探す」までは進んでいるが「払う」手前で止まっている——その線引きが数字で示されました。株式会社ネットプロテクションズが2026年8月4日に公表した「エージェンティックコマースの購買・決済に関する実態調査」によると、AIに任せてもよい範囲は「商品候補の探索」が37.2%で最多、一方「購入・決済の全自動」は2.2%にとどまりました。EC運営者にとって何を意味するのかを、EC参謀の視点で整理します。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事実:AIに任せてよい範囲は商品候補の探索37.2%・口コミ要約29.0%に対し、購入・決済の全自動は2.2%。条件として「最終確認・承認を自分でできること」を挙げた人が52.8%(ネットプロテクションズ調査・n=1,000)。
- 意味:エージェント対応で今効くのは決済連携ではなく、AIが候補を絞る段階で自店が残るかどうか。ここは既存の商品情報整備の延長線上にある。
- アクション:商品候補の比較材料(仕様・条件・レビュー要約)を文章化し、最終確認の画面=カート〜決済の分かりやすさを点検する。
発表の事実:調査の中身と数字
調査を実施したのは株式会社ネットプロテクションズで、公表日は2026年8月4日です。同社はBNPL(後払い決済)を提供しており、その調査・研究機能として「NP総研」を設けています。公表されている調査概要と数値は次のとおりです。
- 調査概要……インターネット調査。調査地域は日本国内。対象は直近6か月以内にネットショッピングで購入した20〜65歳の男女。有効回答数1,000人。調査時期は2026年6月10日〜6月12日。
- AIの利用頻度……AIサービスを「毎日」利用が16.3%、「週に数回」が27.6%で、合わせて43.9%。一方で「ほとんど使わない・使わない」が39.7%と、利用は二極化しているとされています。
- 購買行動でのAI活用(実施したこと)……「あなたへのおすすめから購入」が19.7%で最多。次いで「ChatGPTなどで調べてから購入」12.0%、「楽天AIに質問」9.7%。
- AIに期待する役割……「商品比較・選択の自動化」30.2%、「精度の高い商品発見・提案」27.1%が上位。「支払い方法の自動決済」は1割未満。
- AIに任せてもよい範囲……「商品候補の探索」37.2%、「口コミの要約」29.0%に対し、「購入・決済の全自動」は2.2%。
- 任せる条件……「最終確認・承認を自分でできること」を条件に挙げた人が52.8%。
- BNPL利用者の傾向……BNPL(後払い)利用者では、AIを活用した購買行動の実施率が81.7%、AIによる決済提案の利用意向が83.7%と、全体より高い数値が示されています。
なお、リリースの見出しでは「エージェンティックコマースに関連する購買行動、利用経験は43.9%」という表現が使われています。数値の定義や設問文の細部は、必ず一次情報でご確認ください。
EC運営者にとっての意味
この調査が示す実務上の要点は、AIが購買プロセスのどこまで入り込んでいるかの「線」が見えたことです。ここからはEC参謀としての解釈です。
①エージェント対応の入口は決済ではなく「候補入り」。探索を任せてよい人が37.2%いる一方、決済まで任せる人は2.2%。この差が意味するのは、AIが影響しているのは購買の前半戦であって、決済の技術対応を急ぐ段階ではないということです。エージェンティックコマースという言葉から決済APIの話を想像しがちですが、今の消費者行動に照らせば、優先順位が高いのは商品情報側です。
②最多だったのは「あなたへのおすすめから購入」19.7%。これはChatGPTのような対話型AIではなく、モールやECサイトが元から持っているレコメンドを指します。つまり生活者にとってのAI活用は、新しいツールを開くことよりいつも使っている売り場のなかで起きているとみられます。楽天AIへの質問9.7%という数字も同じ方向です。自社のレコメンド枠や関連商品枠の精度、そして商品データの粒度が、そのままAI経由の露出に効いてくる可能性があります。
③「最終確認は自分で」が52.8%という設計要件。AIに任せる条件として過半数が最終確認を挙げたことは、UI設計への示唆です。仮にAI経由の流入が増えても、最後に人が内容を確かめる画面は残ります。そこで金額・送料・納期・返品条件が一目で分かるかどうかが、離脱率を左右します。これはAI対応というより、従来のカゴ落ち対策そのものです。
④BNPL利用者の高い数値は、決済手段による温度差を示す。BNPL利用者のAI活用購買行動が81.7%という数値は、新しい決済手段を選ぶ層が新しい買い方にも積極的である、という相関を示しているとみられます。調査主体がBNPL事業者である点は割り引いて読む必要がありますが、若年層・新決済層が多い商材ほどAI経由の影響が先に来るという仮説は、自店のデータで検証する価値があります。
EC参謀の見立て
「エージェンティックコマース対応」を検討するとき、いま投資すべきなのは決済の自動化ではなく、比較検討の材料をテキストで持つことだと考えます。任せてよい範囲の上位2つ(候補探索37.2%・口コミ要約29.0%)は、どちらも文章として読める情報がなければAIが処理できない領域です。逆に言えば、商品ページの整備は今のところ「AI対応」と「人向けの改善」が完全に一致しています。
今やるべきこと
調査結果から逆算して、今日から着手できる順に並べます。
- 比較の材料を文章と表に落とす……サイズ・素材・容量・対応機種・使用条件など、比較検討で問われる項目をテキストと表で書き切ります。画像内の文字だけでは、探索を任されたAIは拾えません。
- レビューの要点を自社で要約しておく……口コミ要約を任せたい人は29.0%。レビューの傾向(サイズ感・使用シーン・よくある指摘)を自店で整理して商品ページに載せておけば、要約の材料を自分で用意できます。
- カート〜決済画面の「最終確認のしやすさ」を点検する……総額・送料・納期・返品条件が1画面で読めるかを確認します。過半数が最終確認を条件にしている以上、ここは通過点ではなく判断点です。
- 自社のレコメンド枠を見直す……「あなたへのおすすめ」経由の購入が最多という結果を踏まえ、関連商品・併売枠の設定と商品カテゴリ・属性データの整備状況を確認します。
- 決済の自動連携は様子見でよい……全自動を望む層は2.2%。現時点で先行投資する根拠は薄く、まずは情報整備を優先するのが費用対効果の面で妥当です。
💡 あわせて読みたい
AIへの「相談」がどこまで広がっているかは電通デジタルの調査解説、AIエージェント経由の市場規模予測は矢野経済研究所の調査解説で整理しています。最終確認画面の作り込みについてはカゴ落ち対策の記事が具体的です。
出典
- エージェンティックコマースに関連する購買行動、利用経験は43.9% 購入・決済までAIに任せたい人は2.2%(株式会社ネットプロテクションズ・2026年8月4日/PR TIMES)
- 買い物におけるAI活用「あなたへのおすすめ」が最多 NP総研調査(ECのミカタ・2026年8月10日/報道)
- 株式会社ネットプロテクションズ(公式サイト)
※本記事は2026年8月11日時点の公表資料および報道に基づく速報解説です。調査設計・設問文・数値の定義は必ず一次情報でご確認ください。
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