東京都の消費生活相談が14万5,501件に|ネット通販トラブルの中身とEC事業者がやるべきこと

SNS広告からの購入トラブルが、統計としてはっきり増えています。東京都は2026年7月28日、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の消費生活相談概要を公表し、相談総数が14万5,501件(前年度比9.8%増)になったと発表しました。このうちインターネット通販に関する相談は約3万8千件で、SNSが関連する相談の割合は令和6年度の23.2%から26.2%へ3.0ポイント上昇しています。悪質な事業者の話として片づけられない部分もあるので、確認できた数値と、まっとうに運営している店舗こそやっておくべき対策を整理します。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事実:東京都の令和7年度消費生活相談は14万5,501件(前年度比9.8%増)。インターネット通販は約3万8千件で、SNSが関連する相談の割合は23.2%→26.2%。
- 意味:「SNS広告で買ったら届かない・粗悪だった」という経験が広がるほど、SNS経由の購入全体への警戒が強まる。まっとうな店舗も同じ疑いの目にさらされる。
- アクション:特商法表記・納期表示・問い合わせ導線の3点を点検し、「連絡が取れる店」であることをページ上で先に示す。
発表の事実
公表されたのは、東京都内の消費生活センター等に寄せられた相談を集計した年度概要です。確認できた数値を出典のまま整理します。
- 公表日……2026年7月28日、東京都の報道発表として公開。
- 調査対象……令和7年度(2025年4月〜2026年3月)に都内で受け付けた消費生活相談。
- 相談総数……14万5,501件。令和6年度の13万2,542件から9.8%増加。
- 高齢者・若年層……高齢者の相談は5万668件(全体の34.8%)、若年層は1万9,008件(全体の13.1%)。
- インターネット通販……相談件数は約3万8千件。相談内容の分類では上位に位置しています。
- SNSの関与……インターネット通販の相談のうち「SNS」が関連する相談の割合が令和6年度23.2%→令和7年度26.2%と3.0ポイント増加。
- 商品未着・粗悪品……令和6年度2,115件→令和7年度3,490件に増加。
- 定期購入……令和6年度5,039件→令和7年度4,921件と、高い水準が続いています。
- 通販以外の増加項目……「不審な電気点検やブレーカー(分電盤)の交換」が478件→1,483件、賃貸住宅の家賃値上げに関する相談が517件→1,086件と急増しています。
この統計の読み方
相談件数は「被害の実数」ではなく「相談窓口に届いた件数」です。認知度の向上や周知活動によっても増減するため、増加がそのまま被害の増加を意味するとは限りません。ただし商品未着・粗悪品が前年の1.6倍規模に増えているという動きは、内容として無視しにくい変化だとみられます。
EC運営者にとっての意味
ここからはEC参謀としての解釈です。この統計の影響を最も受けるのは、悪質な事業者ではなくSNSから集客しているまっとうな店舗だと考えています。
①「SNS広告経由は怪しい」という前提が広がる。商品未着や粗悪品の経験が身近になると、消費者は個別の店舗を見る前に経路そのものを警戒します。つまり広告のクリエイティブが良くても、その先で「この店は大丈夫か」を確認されるステップが増えるということです。SNS広告のCVRが以前より鈍く感じる場合、原因が広告ではなくランディング先の信頼情報にある可能性があります。
②未着・粗悪品の相談増は、納期表示と品質表現の問題でもある。実際に届かない詐欺的な事案が含まれる一方で、「思っていたより遅い」「画像と違う」が未着・粗悪品として相談されるケースも構造的に混ざります。海外発送で2〜3週間かかることを明示していない、画像を加工しすぎて実物と印象が違う、といった運用上のずれは、悪意がなくても同じ入口に入ります。
③定期購入は、件数が減っても要注意の領域が続いている。4,921件と前年からわずかに減ってはいますが、5,000件規模が続いていること自体が「解約条件・総額表示の分かりにくさ」が解消していないことを示しているとみられます。定期購入の申込画面の表示ルールは特定商取引法で細かく定められているため、該当する事業者は自社の申込フローを改めて確認する価値があります。
④行政の関心が向いている領域と一致している。東京都は2026年7月にネット・SNS広告の監視結果も公表しており(ネット・SNS広告377件に改善指導)、広告表示と通販トラブルの両面から動いている状況です。SNS起点の通販は、当面のあいだ監視の目が強い領域が続くとみておくのが安全です。
⚠️ 法令の判断は専門家へ
本記事は公表された統計をもとにした速報解説であり、個別の表示・運用が特定商取引法や景品表示法に適合するかどうかを判断するものではありません。定期購入の申込画面表示や広告表現の可否については、必ず消費者庁の最新のガイドラインを確認し、判断に迷うケースは専門家にご相談ください。
今やるべきこと
やることは、疑われる前に「連絡が取れて、条件が明示されている店」だと示すことです。特別な投資は不要で、既存ページの点検だけで大半は済みます。
- 特商法表記を実態と合わせる……事業者名、住所、電話番号、返品条件、送料。テンプレートのまま古い情報が残っていないかを確認します。書き方は特定商取引法に基づく表記の書き方にまとめています。
- 納期を具体的に書く……「順次発送」ではなく「ご注文から◯営業日以内に発送」。海外発送や受注生産は、日数の目安を商品ページ側にも書きます。未着相談の予防はここが一番効きます。
- 問い合わせ導線を目立たせる……問い合わせフォームや連絡先が3クリック以内で見つかるか。連絡手段が分かりにくい店舗は、それだけで相談窓口へ回されやすくなります。
- 定期購入の申込画面を見直す……総額、解約条件、次回発送日、解約の連絡方法が最終確認画面に表示されているかを点検します。
- 商品画像と実物の差を確認する……色や質感を「盛った」加工がないか。粗悪品の相談は、品質そのものより期待とのギャップから生まれることがあります。
EC参謀の見立て
この手の統計は「うちには関係ない」で流されがちですが、影響は市場全体の警戒感という形で戻ってきます。対策として実際に効くのは、納期の明示と連絡先の見つけやすさという地味な2点です。どちらも新規の制作費はかからず、既存ページの文言修正で完了します。SNS広告からの流入があるなら、着地ページに「発送目安」「返品条件」「問い合わせ先」の3つが1画面で見えるかを、今日のうちに確認しておくことをおすすめします。
出典
※本記事は2026年8月6日時点の公開情報に基づく速報解説です。数値は東京都の公表資料に基づきます。最新かつ正確な内容は必ず公式資料をご確認ください。
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