AI相談後の「ECサイト移動」に6割が不満|メルカート調査とEC運営者にとっての意味

AIに相談して商品を選ぶ買い方が広がる一方で、「そのあと」の体験に課題があることを示すデータが出ました。ecbeingグループの株式会社メルカートは2026年8月19日、「ECサイト利用時のAI相談に関する調査」を公表。AIで商品を調べたあとにECサイトへ移動する体験について、60.5%がネガティブな感情を抱いていると発表しました。AIが集客してくれても、受け取る側のECサイトで取りこぼしている——AI時代の新しい「カゴ落ち」の輪郭が見えてきた調査です。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事実:AI相談後のECサイト移動に60.5%がネガティブな感情(女性20代は75.0%)。スムーズに購入できて満足した人は17.8%にとどまる。
- 意味:不満の中心は「検索・ログインのやり直し」25.0%と「AIの表示と実サイトの価格の食い違い」(経験率63.0%)。AI経由の流入が増えるほど、着地ページの摩擦が売上を左右する。
- アクション:AIに拾われる商品情報(価格・在庫・仕様)を最新に保ち、検索から商品ページへ一発で着地できる導線を点検する。
発表の事実:調査の中身と数値
公表されたのは株式会社メルカート(ecbeingグループ)による「ECサイト利用時のAI相談に関する調査」で、発表日は2026年8月19日です。調査は2026年3月18日〜19日にインターネットで実施され、対象はECサイトでの購入経験があり、ChatGPT・GeminiなどのAIで商品の調べ物や相談をしている20〜60代の消費者400名。数値は出典のまま整理します。
- AI相談後のECサイト移動への感情……60.5%がネガティブな感情を抱くと回答。女性20代では75.0%に達する。スムーズに購入できて満足した人は17.8%。
- 不満の内訳……「改めてECサイトで検索・ログインし直すのが面倒」25.0%、「AIの画面とECサイトの情報に差がないか不安」21.8%、「移動自体が手間で購入を諦めることがある」7.5%、「知らないサイトへの移動が不安」6.3%。
- 価格の食い違いの経験……AIが提示した価格とECサイトの実際の価格の食い違いを63.0%が経験(「よくある」20.3%+「たまにある」42.8%)。女性20代では82.5%。
- 価格ズレと不満の相関……価格の食い違いが「全くない」層でECサイト移動に不満を持つのは25.6%だが、「たまにある」層では76.0%に跳ね上がる。
- AIによる購入代行への意向……AI相談が「ほぼ毎回」のヘビー利用層では53.8%が購入代行に肯定的(「2〜3回に1回」層は24.1%、「数回程度」層は15.0%)。任せられる金額の上限は「3,000円未満」32.8%・「1万円未満」30.8%と、1万円未満が6割超を占める。
押さえておきたいのは、この調査の対象が「すでにAIで商品の調べ物をしている人」に絞られている点です。消費者全体の平均ではなく、AI経由でECに来る先行層の体験を映した数字として読むのが正確です。
EC運営者にとっての意味
この調査が示しているのは、AI集客の勝負どころが「AIに載るか」だけでなく「載ったあとの着地」に移りつつあるという点だとみられます。ここからはEC参謀としての解釈です。
①AI経由の流入は「実数」になりつつあり、受け皿の質が問われ始めた。ShopifyはAI経由の流入が前年比3倍になったと決算で公表しており(速報記事参照)、AIで調べてから買う行動はすでに珍しくありません。今回の調査は、その流入の6割が「気持ちよく着地できていない」ことを示しています。集客チャネルとしてのAIが伸びるほど、この摩擦は無視できない損失になるとみられます。
②最大の敵は「情報の食い違い」。価格ズレの経験率63.0%という数字は、AIの回答が古い情報や第三者サイトの情報を拾っていることの表れです。店舗側で完全にコントロールはできませんが、価格改定の頻度が高い店・セール価格の表記が複雑な店ほどズレが起きやすいと考えられます。価格ズレ経験者の76.0%が移動に不満を持つという相関は、ズレが「この店、大丈夫かな」という不信に直結することを示唆しています。
③「検索・ログインのやり直し」は自店で改善できる領域。不満の最多は価格ではなく「もう一度探す手間」25.0%でした。AIで商品名を知った人がサイト内検索で同じ商品にたどり着けるか、商品ページに直接着地したときに購入まで何タップかかるか——ここは今日から点検できます。
⚠️ 数値の読み取りに関する注意
本調査はAI相談の利用者400名を対象としたもので、消費者全体の傾向を示すものではありません。また調査時期は2026年3月で、発表(8月19日)までに各AIサービスの仕様は更新されている可能性があります。自店の判断は自店のアクセス解析(AI経由の参照元の推移)と合わせて行ってください。
今やるべきこと
まずやるべきは、AIに拾われる情報の鮮度と、着地後の導線の点検です。大がかりな対応より、ズレと手間を減らす基本の整備が先です。
- 商品情報の「公開されている姿」を確認する……主力商品名でChatGPTなどに質問し、自店の価格・在庫・仕様がどう表示されるかを見る。大きくズレていれば、商品ページの構造化データや価格表記の整理を検討する。
- サイト内検索を試す……AIが答えそうな商品名・型番・悩みワードで自店のサイト内検索を実行し、目的の商品が1位に出るかを確認する。出ないなら商品名・検索キーワード設定を見直す。
- 商品ページ直着地の購入動線を数える……商品ページから購入完了までのタップ数と、ログインを求めるタイミングを確認。ゲスト購入や外部ID決済で「やり直しの手間」を減らせないか検討する。
- セール時の価格表記を一貫させる……二重価格やクーポン適用後価格の見せ方が複雑だと、AIの提示額とのズレが生まれやすい。実売価格が一目で分かる表記に揃える。
EC参謀の見立て
「AIに選ばれる」対策(AIO・GEO)は今後も重要ですが、この調査が教えてくれるのは、選ばれたあとの数十秒で6割を失いかねないという現実です。幸い、着地後の改善は従来のCVR改善(検索精度・購入導線・価格表記)と同じ筋肉でできます。AI時代の新しい施策というより、「基本の徹底が、AI経由のお客さまにも効く」と捉えるのが実務的です。カゴ落ち対策の基本はこちらの記事で整理しています。
出典
- ECサイト利用時のAI相談に関する調査(株式会社メルカート・2026年8月19日)
- AIで買い物をする時代の消費行動とは? 6割がECサイトへの移動に不満(ネットショップ担当者フォーラム・2026年8月20日)
※本記事は2026年8月21日時点の公開情報に基づく速報解説です。数値は出典の調査結果をそのまま引用しています。最新かつ正確な情報は発表元の公式発表をご確認ください。
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