開業・法務

ECサイトのプライバシーポリシー・利用規約の作り方

最終更新:2026.08.17 / EC参謀 編集部
ECサイトのプライバシーポリシー・利用規約の作り方

プライバシーポリシーと利用規約は、法律用語を覚えて書くものではなく、自分の店が実際にやっていることを、そのまま言葉にする作業です。テンプレートを貼っただけのページが機能しないのは、書いてある内容と実際の運用がずれているからにほかなりません。この記事では、プライバシーポリシーに書くべき項目・特定商取引法に基づく表記との役割分担・利用規約の要となる条項・公開場所と改定の運用までを、開業前でも順に進められる形で整理します。なお、法令の解釈や自店に必要な対応範囲は状況によって変わるため、最終的な判断は必ず公式情報と専門家への確認を組み合わせてください

⏱ 忙しい人向け 3行まとめ

  • プライバシーポリシーは「集めた個人情報を何にどう使うか」を説明・公表する文書。利用規約はお客さまとの取引条件を定める契約文書で、役割がまったく違う。
  • ECで抜けやすいのは外部ツール(解析・広告・チャット)の記載、配送や決済の委託先、レビューや同梱物での情報利用の3つ。実態の棚卸しが先で、文章は後。
  • 利用規約でいちばん効くのは注文成立の時期の条項。ここが曖昧だと、在庫切れ・価格の誤表示が起きたときに説明の根拠を持てない。

プライバシーポリシーとは|ECサイトに必要な理由

プライバシーポリシー(個人情報保護方針)とは、事業者が取得した個人情報をどんな目的で使い、どう管理し、誰に提供するのかをまとめて公表する文書です。個人情報を取り扱う事業者には、利用目的をあらかじめ公表するか、取得時に本人へ通知することが求められており、その公表手段としてWebサイト上に置かれるのがプライバシーポリシーにあたります。

ネットショップの場合、注文を受けた時点で氏名・住所・電話番号・メールアドレスを必ず取得します。つまり開業した瞬間から個人情報を扱う事業者になるということで、規模の大小は関係ありません。加えて、カートやモールの審査、決済代行の審査、広告出稿の審査でもプライバシーポリシーの掲載が確認されることが一般的です。

ここで押さえておきたいのは、プライバシーポリシーは「安全に管理します」という宣言文ではなく、実際の取り扱いを説明する説明書だという点です。立派な文章が書いてあっても、実際には別の使い方をしていれば意味を失います。作る順番は、文章から入るのではなく、まず自店が「どんな情報を・どこから・何のために」取得しているかを書き出すところからです。

3つの文書役割性格
プライバシーポリシー個人情報の利用目的・管理・提供先を説明する事業者からの説明・公表
利用規約注文・支払い・キャンセル・禁止事項など取引条件を定めるお客さまとの契約条件
特定商取引法に基づく表記事業者情報と販売条件を法定の項目で開示する法令に基づく表示

この3つは重なる部分があるため混同されがちですが、目的が異なるので原則として個別に用意します。特定商取引法に基づく表記の書き方はECの特定商取引法の表記|書き方と必須項目で詳しく解説しています。

プライバシーポリシーに書くべき項目

プライバシーポリシーの骨格は、「誰が」「何を」「何のために」「誰に渡すか」「どう管理するか」「問い合わせ先はどこか」の6つで組み立てられます。以下は一般的な構成例で、自店の取り扱いに合わせて増減させて使ってください。

項目書く内容の例
事業者の情報事業者名(屋号ではなく正式名称)、所在地、代表者名
取得する情報氏名・住所・電話番号・メールアドレス・購入履歴・アクセス情報など、実際に取得しているもの
利用目的商品の発送、受注連絡、問い合わせ対応、メールマガジン配信、統計分析、広告配信の最適化など
第三者提供本人の同意なく第三者に提供しない旨と、例外となる場合(法令に基づく場合など)
委託配送業者・決済代行・倉庫・システム会社などに業務委託に伴い預ける場合があること
安全管理措置アクセス権限の制限、パスワード管理、通信の暗号化など実際に行っている対策
Cookie等の利用アクセス解析や広告配信でCookie等を利用している場合はその旨と、無効化の方法
開示・訂正・削除の請求本人からの請求を受け付ける手続きと窓口
問い合わせ窓口個人情報の取り扱いに関する連絡先(メールアドレス・フォーム)
改定について内容を改定する場合があること、最終改定日

このうち、店舗ごとの差が最も出るのが利用目的です。「商品の発送のため」だけで済む店舗はほとんどなく、実際にはメルマガ、LINE配信、レビュー依頼、同梱チラシの宛名印字、リターゲティング広告、アンケートなど、複数の使い方をしています。書いていない目的には使えないと考えるのが基本なので、将来やる予定があるものも含めて先に洗い出しておくと、あとから追記する手間が減ります。

💡

「取得している情報」の洗い出しは画面ベースで

頭で考えるより、実際の画面を開いて数えるほうが正確です。注文フォーム、会員登録フォーム、問い合わせフォーム、レビュー投稿欄、メルマガ登録欄、LINE連携、アンケート——この順に開いて、入力項目をそのまま書き出してください。フォームに項目があるのにポリシーに書かれていない情報が、たいてい1つか2つ見つかります。

ECで見落としやすい3つの論点

ネットショップ特有の抜け漏れは、外部ツール・委託先・海外サービスの3か所に集中します。どれも「自分では個人情報を渡している意識がない」場所である点が共通しています。

① 外部ツール(解析・広告・チャット)

アクセス解析タグ、広告のコンバージョンタグ、チャットボット、レビュー収集ツール、ヒートマップ。導入時に「タグを貼るだけ」で済むため記載が漏れがちです。使っているタグの一覧を作るところから始めます。

② 業務委託先

配送業者、決済代行、フルフィルメント倉庫、受注代行、カートやメール配信のシステム会社。委託にあたっては委託先を適切に監督することが求められるため、契約書と取り扱い範囲の確認をセットで行います。

③ 海外にあるサービスの利用

海外事業者のカート・メール配信・クラウドストレージ・AIツールなどを使う場合、データが国外で保管されることがあります。外国にある第三者への提供にあたるかどうかは扱いが分かれるため、事前の確認が必要です。

とくに③は、生成AIツールを業務に取り入れる店舗が増えたことで論点として大きくなっています。問い合わせ文面をそのままAIツールに貼り付けて返信案を作る運用は、お客さまの氏名や住所を外部サービスに送っていることになり得ます。社内ルールとして、AIに投入する前に個人が特定できる情報を削る手順を決めておくのが現実的です。

⚠️

法令の要件は変わります

個人情報の取り扱いに関するルールは改正が重ねられており、漏えい時の報告義務、外部送信に関する規律、越境提供の扱いなど、実務に影響する論点が定期的に更新されています。本記事の内容は一般的な整理であり、自店に必要な対応の範囲・最新の要件については、個人情報保護委員会や消費者庁などの公式情報および専門家にご確認ください。

利用規約は何のために作るのか|プライバシーポリシーとの違い

利用規約は、店舗とお客さまの間の取引条件をあらかじめ定めておく契約文書です。プライバシーポリシーが「説明」であるのに対し、利用規約は「取り決め」であり、トラブルが起きたときにどちらの言い分が通るかの根拠になります。

利用規約がないとどうなるか。実務でよく起きるのは次のような場面です。

規約がない・曖昧なとき

  • 価格を誤って表示したまま注文が入り、キャンセルできるかどうかで揉める
  • 在庫切れなのに注文が通り、「もう買ったはず」と言われて説明できない
  • 会員が不正利用しても、アカウント停止の根拠がない
  • レビュー欄に不適切な投稿があっても、削除の基準を示せない

規約で決めてあるとき

  • 注文成立の時期を「当店が承諾の通知を発した時点」と定め、それまではキャンセルできる形にしておける
  • 在庫切れ時の取り扱いを明記し、同じ説明を全員に返せる
  • 禁止事項と措置を定めてあるので、対応が場当たりにならない
  • 投稿の削除基準が公開されているため、判断を説明できる

なかでも重要度が高いのが注文成立の時期です。自動返信メールをもって契約成立とするのか、店舗が別途承諾の連絡をした時点とするのかで、在庫切れや誤表示が起きたときの対応可能な範囲が変わります。多くの店舗では後者を選び、自動返信メールには「注文を受け付けた旨であり、契約の成立ではない」旨を明記する運用をとっています。

利用規約に入れておきたい主な条項

ネットショップの利用規約は、注文の流れに沿って条項を並べると抜けにくくなります。最低限の骨格は次のとおりです。

条項定めておく内容
適用範囲この規約が誰に・どのサービスに適用されるか
会員登録・アカウント登録要件、ID・パスワードの管理責任、退会の方法
注文と契約の成立いつ契約が成立するか、在庫切れ・誤表示時の取り扱い
支払い利用できる決済手段、支払い期限、手数料の負担
商品の引渡し発送時期の目安、配送不能・不在時の取り扱い
キャンセル・返品・交換受付条件と送料負担。特定商取引法に基づく表記の返品特約と内容を揃える
禁止事項転売目的の大量購入、虚偽情報の登録、他の利用者への迷惑行為など
知的財産掲載画像・文章の権利の帰属、無断利用の禁止
免責店舗が責任を負わない範囲(不可抗力による遅延など)
規約の変更変更できること、変更時の周知方法と効力発生時期
準拠法・管轄適用される法律と、紛争時の管轄裁判所

作成時にとくに注意したいのが、返品・キャンセル条項が特定商取引法に基づく表記と食い違わないことです。両方に返品の記載があるのに条件が違う、というケースは実際によくあります。片方を直したらもう片方も直す、というルールにしておくと事故を防げます。また、免責条項は範囲を広く書けば安心というものではなく、消費者との契約では効力が認められない書き方もあるため、この部分こそ専門家の確認をおすすめします。

作成から公開までの手順

作業は「実態の棚卸し → たたき台 → 自店仕様への修正 → 設置 → 確認」の5段階で進めると迷いません。順番を守るだけで、テンプレートを写すだけの状態から抜け出せます。

① 取得している情報と使い道を書き出す

フォームの入力項目、導入している外部ツール、業務委託先、同梱物や配送ラベルでの情報利用まで、実際の運用をリスト化します。ここが土台になります。

② たたき台を用意する

利用しているカートのテンプレート、公的機関が公開している雛形、同業他社の構成などを参考に骨格を作ります。この時点ではまだ他人の文章です。

③ ①に合わせて書き換える

やっていない項目は削除し、やっているのに書かれていない項目を追加します。連絡先・事業者名を自店のものに差し替え、サンプル文の残骸がないか通読します。

④ 設置する

全ページのフッターに常時リンクを置き、会員登録画面と注文確認画面からも到達できるようにします。利用規約は注文確定前に確認できる導線に載せます。

⑤ 第三者に読んでもらう

社内の別担当者、または専門家に通読してもらいます。特に返品・免責・注文成立の3点は、自店の運用と一致しているかを重点的に確認します。

公開場所については、フッターに置くだけで満足しないのがポイントです。お客さまが最も判断に迷うのは注文確定の直前なので、その画面から返品条件や規約に到達できるかを実際にクリックして確かめてください。スマートフォンでフッターまで到達するには相当なスクロールが必要になることも多く、PCで確認して終わりにすると導線の悪さに気づけません。

よくある不備と、公開後の運用

公開後に問題になるのは、書き忘れよりも更新されていないことです。文書は作った時点が最新で、以後は運用が変わるたびに実態から離れていきます。

典型的な不備は次の4つです。

①テンプレートの固有名詞が残っている。他社名やサンプルの住所がそのままになっているケースは珍しくありません。公開前に社名・屋号・連絡先を全文検索して確認します。

②新しいツールを入れたのに追記していない。チャットボット、レビュー収集、広告タグ、AIツールの導入は、いずれも取り扱いの変更にあたり得ます。ツール導入の稟議に「ポリシー確認」を1行足しておくのが確実です。

③販路を増やしたのに反映していない。自社サイトのみだった店舗が楽天やAmazonに出店すると、取得経路も委託先も増えます。モール側の規約と自社の規約の関係も整理が必要になります。

④最終改定日が書かれていない。いつ時点の内容かが分からない文書は、お客さまにも社内にも不親切です。改定日と、可能なら主な変更点を残しておきます。

公開前・公開後の点検リスト

  • フォームの入力項目と、ポリシーに書いた取得情報が一致している
  • 導入中の外部ツールがすべて記載されている(解析・広告・チャット・レビュー)
  • 返品・キャンセルの条件が、特定商取引法に基づく表記と食い違っていない
  • 注文成立の時期が明記され、自動返信メールの文面と整合している
  • 全ページのフッターと、注文確定前の画面から到達できる
  • 最終改定日が記載され、年1回の見直し時期を決めてある

EC参謀の見立て

この2つの文書を「開業時に一度だけ片づける作業」だと捉えている店舗が多いのですが、実際にはツールを1つ入れるたび、販路を1つ増やすたびに更新が必要になる運用ドキュメントです。おすすめしているのは、ポリシーそのものを磨くことではなく、「使っている外部ツールと委託先の一覧表」を1枚作って、四半期に一度だけ見直すこと。この表さえ最新なら、文書の修正は30分で終わります。逆に表がなければ、何が変わったのかを思い出すところから始めることになり、結局は放置されます。開業まわりの手続き全体はネットショップ開業に届出は必要?開業届と手続きもあわせてご覧ください。

よくある質問

カートのテンプレートをそのまま公開してはいけませんか?

そのまま公開すること自体が禁じられているわけではありませんが、実務上はほぼ確実に手直しが必要です。テンプレートは「多くの店舗に当てはまる最大公約数」で書かれているため、自店が実際にやっていない取り扱い(例:メルマガ配信をしていないのに配信目的が書いてある)が残ったり、逆に実際にやっていること(外部の広告タグ、レビュー投稿の利用、同梱物への氏名印字など)が書かれていなかったりします。プライバシーポリシーは「実際の取り扱いを説明する文書」なので、実態とずれていることのほうが問題になります。最低限、①利用目的の一覧を自店の業務に合わせて書き換える、②使っている外部ツール(アクセス解析・広告・チャット・レビュー)を洗い出して反映する、③問い合わせ窓口を自店の連絡先にする、の3点は必ず直してください。そのうえで、どこまでが必要十分かの最終判断は専門家に確認するのが安全です。

プライバシーポリシーと利用規約は1ページにまとめてもいいですか?

分けて作るほうが実務では扱いやすくなります。理由は3つあります。1つ目は、2つの文書は性格が違うためです。プライバシーポリシーは個人情報の取り扱いを説明・公表するための文書で、利用規約はお客さまとの間の契約条件を定める文書です。2つ目は、改定のタイミングが揃わないためです。新しい分析ツールを入れればプライバシーポリシーだけを直すことになり、1ページにまとまっていると変更履歴が追いにくくなります。3つ目は、購入フローでの見せ方が違うためです。利用規約は注文確定前に同意を取る導線に載せることが多く、プライバシーポリシーは常時公表しておく性格が強いので、リンク先を分けたほうが導線を作りやすくなります。ページ数を増やしたくない場合でも、1ページ内で見出しと目次を明確に分け、それぞれに最終改定日を書いておくと運用しやすくなります。

個人で運営する小さなショップでも必要ですか?

規模にかかわらず用意しておくことをおすすめします。ネットショップは注文を受ける時点で氏名・住所・電話番号・メールアドレスといった個人情報を必ず取り扱うため、事業として販売している以上は個人情報を扱う事業者としての対応が求められる、というのが基本的な考え方です。売上規模や法人・個人の別で不要になる、と単純化しないほうが安全です。加えて、実務上の理由も大きく、利用規約がないと注文成立の時期やキャンセルの扱いが決まらず、価格の誤表示や在庫切れが起きたときの説明根拠がなくなります。トラブルは規模の小さい店舗でも同じように起きるので、むしろ人手の少ない店舗ほど「書いてあるものを見せて説明できる」状態の価値が高くなります。自分の店舗にどこまでの対応が求められるかは、個人情報保護委員会などの最新の公表資料と専門家への確認を組み合わせて判断してください。

「やることが多すぎて、手が回らない」——そんな時は。

EC参謀を運営する株式会社オタツーは、楽天・Shopify・Amazonの運営代行を4,000件以上支援してきました。原因の特定から日々の運用まで、伴走します。まずは無料で、あなたのショップの伸びしろを診断します。