カスハラ対策が10月1日から事業主の義務に|電話・メール・SNSも対象、EC運営者にとっての意味と今やるべきこと

お客様からの問い合わせ対応を担う、ネットショップのスタッフにも関わる制度の変更です。2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法にもとづき、カスタマーハラスメント(カスハラ)を防ぐための雇用管理上の措置が事業主の義務になります。厚生労働省の資料では、電話やSNSなどインターネット上で行われる言動も含まれると明記されています(2026年9月29日時点)。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事実:10月1日から、事業主はカスハラへの方針を決めて従業員に知らせること、相談窓口を置くこと、起きたあとに事実を確かめて再発を防ぐことなどを行う必要があります。電話やSNSでの言動も対象です。
- 意味:ネットショップでも、電話、メール、チャット、レビュー欄で強い要求や暴言を受けることがあります。これまで担当者の我慢で済ませていた対応を、会社としての決まりに置き換えることが求められるとみられます。
- アクション:方針を一枚にまとめて社内に知らせ、相談先を決め、担当者が一人で抱えない対応の流れを用意しておくのが現実的です。お客様の正当な申し出とは分けて考えることも大切です。
発表の事実
2026年10月1日から、事業主はカスハラを防ぐための措置を講じることが義務になります(厚生労働省のリーフレット)。根拠は2025年に改正された労働施策総合推進法で、講ずべき措置の中身は厚生労働省の指針で示されています。
厚生労働省の資料では、職場のカスハラを次の3つの要素をすべて満たすものとしています。
| 要素 | 資料での説明(要約) |
|---|---|
| ①顧客等の言動 | 顧客、取引の相手方、施設の利用者など、事業に関係する人の言動。これから商品を買う可能性がある人も含む |
| ②社会通念上許容される範囲を超える | 要求の内容(理由のない要求、契約で想定したサービスを著しく超える要求、不当な損害賠償の要求など)や、手段・態様(脅迫、暴言、威圧的な言動、継続的・執拗な言動など)が行き過ぎているもの |
| ③就業環境が害される | その言動によって、働く人の就業環境が害されるもの |
そのうえで、電話やSNSなどインターネット上で行われる言動も含まれるとされています。事業主が講ずべき措置として示されているのは、大きく次のとおりです。
- 方針の明確化と周知……カスハラには毅然と対応し従業員を守る方針を決めて知らせる。カスハラの内容と、あらかじめ決めた対処(上司に指示を仰ぐ、できる限り一人で対応させない、犯罪になり得る言動は警察へ通報する など)も知らせる
- 相談体制の整備……相談窓口を決めて知らせ、担当者が適切に対応できるようにする
- 起きたあとの対応……事実を迅速・正確に確かめ、被害を受けた人への配慮と、再発防止の措置を行う
- 抑止のための措置……特に悪質なカスハラへの対処の方針をあらかじめ決めて知らせ、対処できる体制を整える
- あわせて行う措置……相談した人のプライバシーを守ること、相談したことなどを理由に不利益な扱いをしないことを定めて知らせる
資料には注意書きとして、対策を講じる際には消費者の権利や、障害者差別解消法の「不当な差別的取扱いの禁止」「合理的配慮の提供」に留意する必要があるとも書かれています。また、自社の従業員が取引先など他社の従業員にカスハラをした場合に、その会社から事実確認などへの協力を求められたら、応じるよう努めることも示されています。
EC運営者にとっての意味
EC運営者にとっての意味は、顔を合わせない接客でも、スタッフを守る決まりを会社として持つ必要がはっきりしたことだと考えています。ここからはEC参謀としての解釈です。
①ネットショップの窓口も対象になりうる。ネットショップの問い合わせは、電話、メール、チャット、モールのメッセージ機能、SNSのコメントやレビューなど、画面越しのものが中心です。資料で電話やSNSなどネット上の言動も含まれると明記されているため、「店頭がないから関係ない」とは言いにくいとみられます。
②「担当者が我慢して終わらせる」形からの切り替えが求められる。少人数のショップでは、強い言葉の問い合わせを担当者が一人で受け止め、そのまま返金や特別対応で収めることも少なくないと考えています。今回の措置は、方針・相談先・対応の流れを会社として決めておくことが中心です。対応を個人の判断に任せず、会社の決まりとして持っておくことが、スタッフの負担を減らすことにもつながります。
③正当な苦情とは分けて考える。商品の不具合、配送の遅れ、説明と違ったといった申し出は、厳しい言い方であっても多くは正当な苦情です。資料でも消費者の権利への留意が求められています。「カスハラ」という言葉を、耳の痛い声を退ける理由に使わないことが、お店の信頼を守るうえでも大切だと考えています。
④運営を外に任せている場合は、取り決めの確認も。問い合わせ対応を代行会社やコールセンターに任せているショップでは、強い要求を受けたときに誰がどこまで判断するかを、委託先と決めておくと安心です。
今やるべきこと
今やるべきことは、方針・相談先・対応の流れの3つを、小さくても形にしておくことです(2026年9月29日時点)。
- 方針を一枚にまとめて社内に知らせる……「スタッフを守る」「行き過ぎた要求には応じない」「悪質な場合は対応を打ち切り、必要に応じて警察や専門家に相談する」といった基本方針を文章にします。
- 相談先と引き継ぎ先を決める……担当者が困ったときに誰に相談するか、どの時点で上長に引き継ぐかを決め、担当者に伝えます。少人数でも「一人で抱えない」流れを作るのが目安です。
- 問い合わせの記録を残す……メールやチャットは履歴を残し、電話は日時と要点をメモします。事実を確かめるときの材料になります。
- 返品・返金のルールを確認しておく……契約で想定したサービスを著しく超える要求かどうかを判断するには、返品や交換の条件がはっきりしていることが前提になります。ページの記載を見直しておきます。
EC参謀の見立て
今回の義務化は、スタッフを守るための仕組みづくりが中心で、お客様の声を減らすためのものではないと受け止めています。正当な申し出には丁寧に、行き過ぎた言動には会社として対応するという線引きを、返品ルールや問い合わせの流れとセットで整えておくと、担当者も迷いにくくなります。問い合わせ対応の設計はECのカスタマーサポート設計で整理しています。
出典
- 令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!カスタマーハラスメント対策の義務化(厚生労働省・PDF)
- 従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
※制度の解釈や自社の対応が十分かどうかは、最新の厚生労働省の資料をご確認のうえ、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や専門家にご相談ください。