景品表示法のEC注意点|二重価格・打消し表示のNG例

景品表示法でECが指摘を受けるのは、悪意のある嘘よりも「盛った言い回し」と「根拠のない元値」です。セール告知の打ち消し線、送料無料の但し書き、レビュー施策の設計——どれも売上を作るための工夫ですが、根拠の残し方を間違えると一気にリスクに変わります。この記事では、優良誤認・有利誤認の見分け方/二重価格表示に必要な根拠/打消し表示のNG例/ステマ規制とレビュー/違反時の処分/チェックの仕組み化までを、売り場の表現に沿って整理します。なお、個別の表示が違法かどうかは事案ごとの判断になるため、最終的な確認は消費者庁の公表資料と専門家への相談を組み合わせてください。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 景表法で問われるのは「実際より著しく良く見せていないか」「著しく有利に見せていないか」の2点。表現の巧拙ではなく、裏づけとなる事実があるかが分かれ目。
- ECで最も多いのが二重価格表示。打ち消し線の「通常価格」には、その価格で実際に相当期間販売していた実績が要る。セール直前に上げた価格を元値にするのは典型的なNG。
- 打消し表示(※一部地域を除く 等)は、書いてあるだけでは足りない。スマホで強調表示と一緒に読める位置・大きさにあるかが実務上の基準になる。
景品表示法とは|ECで問われるのは「表示」と「景品」の2つ
景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)とは、商品やサービスの内容・価格について実際より著しく良く見せる表示を禁止し、あわせておまけ(景品類)の金額に上限を設ける法律です。消費者が正しく選べる状態を守るためのルールで、事業規模の大小や法人・個人の別を問わず適用されます。
ECで対象になる「表示」は、商品ページの本文だけではありません。商品名、サムネイル画像に載せた文字、バナー、メルマガ、LINE配信、SNS投稿、リスティング広告の見出し、同梱チラシ、パッケージ——一般消費者に向けて出しているものはすべて含まれます。ページ本体は慎重に書いていても、広告の見出しやサムネイルの文字だけが独り歩きして問題になるケースは珍しくありません。
禁止される表示は大きく3種類です。優良誤認表示(品質・規格などを実際より著しく優良に見せる)、有利誤認表示(価格や取引条件を実際より著しく有利に見せる)、そして指定告示による表示(おとり広告、原産国、ステルスマーケティングなど)。ECの現場でヒヤリとする場面のほとんどは、この3つのどれかに当てはまります。
もう1つの柱が景品規制です。購入者へのおまけやキャンペーンの賞品には、取引価額に応じた上限額が定められています。プレゼント企画を打つ前に確認が必要な部分で、詳しくは後述のよくある質問で触れます。
優良誤認と有利誤認|ECで起きやすい表現の見分け方
2つの違いは「中身の話か、条件の話か」です。商品そのものの品質・性能・成分に関する誇張が優良誤認、価格・数量・特典・期間など取引条件に関する誇張が有利誤認にあたります。
| 区分 | 何を偽ったか | ECで起きやすい例 |
|---|---|---|
| 優良誤認表示 | 品質・規格・内容 | 根拠のない「業界最高品質」、効果を断定する表現、実験データのない「◯%改善」、実際とは異なる素材・産地の記載 |
| 有利誤認表示 | 価格・取引条件 | 実績のない「通常価格」からの値引き表示、実際は継続している「本日限り」、条件が隠れた「送料無料」「返金保証」 |
| 指定告示 | 取引の実態・広告主体 | 在庫がほとんどない目玉商品での集客(おとり広告)、広告と分かるように表示していない依頼投稿(ステマ) |
判断のポイントは「著しく」という言葉です。多少の表現の工夫がすべて違反になるわけではなく、消費者の選択に影響を与えるほどのズレがあるかどうかが問われます。とはいえ実務では、この線引きを社内で議論するより、「その表現の根拠になる資料を今すぐ出せるか」で自己点検するほうが早くて確実です。出せないなら書かない、が原則になります。
特に注意したいのがNo.1表示・最上級表示です。「売上No.1」「顧客満足度No.1」は、調査の対象範囲・期間・出典を明示し、客観的な調査に基づいている必要があります。調査の設計自体が恣意的であれば、出典を書いていても優良誤認・有利誤認と判断されうる点は押さえておいてください。
二重価格表示のNG例|「通常価格」に必要な根拠
二重価格表示で必要なのは、打ち消し線を引く価格が「実際に相当期間販売されていた価格」であることです。比較対照価格に根拠がなければ、値引き幅を実際より大きく見せたことになり、有利誤認表示にあたるおそれがあります。
消費者庁が公表している「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」では、過去の販売価格を比較対照価格に用いる場合の目安が示されています。要点は次の3点です(いずれも2026年8月時点の公表資料に基づく目安であり、個別判断は事案によります)。
- セール開始時点からさかのぼって8週間のうち、過半の期間で販売していた価格であること……販売期間が8週間に満たない場合は、その期間の過半が目安になります。
- セール開始時点から2週間以上前に販売されていた価格であること……直前の数日だけその価格を掲げても根拠にはなりません。
- その価格での販売期間が通算2週間未満の場合は、原則として「最近相当期間」に当たらないとされています。
ここから導かれる典型的なNGが、セール直前に価格を引き上げ、その価格を元値としてOFF率を大きく見せるやり方です。大型セールの前に価格を吊り上げる運用は、モール側の規約でも禁止されていることが多く、法令とプラットフォーム規約の両面でリスクになります。
❌ NGになりやすい例
・セール2日前に4,980円へ変更し「通常4,980円→2,980円」と表示
・自社で決めた金額を「メーカー希望小売価格」と記載
・調査時期も対象も書かずに「他社より30%安い」
・「今だけ半額、来月から通常価格」と書きながら値上げしない
⭕ 根拠を残せる例
・過去8週間の価格改定履歴をCSVで保存している
・メーカーが公表している希望小売価格の資料を保管している
・比較した他社価格の調査日・調査対象・スクリーンショットを残している
・セール終了後に実際に元の価格へ戻す運用が定着している
比較対照価格には、過去の販売価格のほかにメーカー希望小売価格や他社の販売価格を使う方法もあります。ただし前者は「あらかじめ公表されているもの」であることが前提で、自社で任意に設定した金額を希望小売価格と称することはできません。後者は、同一商品であること、調査時点と対象範囲を明示することが求められます。
⚠️ 価格表示の運用で必ず決めておくこと
価格変更の履歴を後から追えない店舗は、指摘を受けたときに「根拠がなかった」ことになりかねません。カートやモールの管理画面に価格改定履歴が残らない場合は、変更のたびにCSVエクスポートかスクリーンショットを日付つきで保存する運用を決めてください。なお、法令の解釈や個別表示の適否は事案ごとに異なります。最新の考え方は消費者庁の景品表示法に関するページを確認し、判断に迷う表示は専門家にご相談ください。
打消し表示のNG例|注意書きは「読まれる形」でなければ意味がない
打消し表示は、書いてあるかどうかではなく強調表示と一緒に無理なく読めるかどうかで評価されます。大きく打ち出した文言(強調表示)に例外や条件があるとき、その説明が小さすぎたり離れすぎていたりすると、条件が伝わっていないものとして扱われるおそれがあります。
消費者庁は打消し表示に関する実態調査を公表しており、文字が小さい場合、強調表示から物理的に離れている場合、スマートフォンでスクロールしないと現れない場合などに、消費者が内容を認識しにくいことが指摘されています。ECの売り場に置き換えると、次のような形が危うい表示です。
- 「送料無料」+ページ最下部に極小文字で「※一部地域を除く」……離島・沖縄が対象外なら、価格の近くに書く。
- 「全品50%OFF」+バナー画像内の小さな「※対象商品に限る」……画像内の注釈はスマホで縮小されて読めなくなります。
- 「返金保証」+別ページのFAQにだけ書かれた条件……申請期限・回数制限・未開封条件は同じ画面に。
- 「初回500円」+定期回数の縛りが規約リンクの先にだけある……継続条件は購入ボタンの近くで完結させる。
実務の判断基準はシンプルです。スマートフォンで、強調表示と条件を1画面の中で同時に読めるか。これを満たしていない注意書きは、法的な議論の前に、そもそも顧客に伝わっていません。伝わっていない条件は、あとで返品・返金・クレームというコストになって返ってきます。
あわせて、期間の表示にも注意が必要です。「本日限り」「今だけ」を掲げながら実際には毎日更新して継続している運用は、有利誤認表示と判断されるおそれがあります。カウントダウンタイマーを設置している場合は、タイマーが切れたあとに本当に価格が戻るかを確認してください。クーポン施策の設計でも同じ考え方が必要になります。
ステマ規制とレビュー・体験談の扱い
2023年10月1日から、事業者が自ら行う表示であることを消費者が判別しにくい表示(いわゆるステルスマーケティング)が、景品表示法の指定告示として規制されています。ポイントは、責任を負うのはインフルエンサーや投稿者ではなく、依頼した事業者側だという点です。
ECで関係してくるのは、主に次の場面です。
依頼・提供を伴う投稿
インフルエンサーへの商品提供や報酬を伴う投稿、アフィリエイターによる紹介など。「PR」「広告」「提供」など、広告であることが明瞭に分かる表示が必要です。文末のハッシュタグに埋もれる形は避けます。
レビュー・お客様の声
自社スタッフや関係者による投稿、高評価を条件とした特典付与は問題になり得ます。レビュー依頼自体は可能ですが、評価の内容を条件にしないことが原則。掲載する体験談は、実在する購入者のものであることが前提です。
体験談を商品ページに載せる場合、その内容が商品の効果を示すものとして使われるなら、体験談であっても優良誤認の対象になり得ます。「個人の感想です」と添えれば何を書いてもよい、という理解は誤りです。効果を示す表現は、体験談ではなく客観的な根拠で支えるのが原則になります。
違反したらどうなるか|措置命令・課徴金・直罰
違反が認められた場合、まず行われるのは消費者庁または都道府県による措置命令で、再発防止策と一般消費者への周知(公示)が求められます。公表される点が、EC事業者にとっては実質的に最も重い影響です。
- 措置命令……表示の差し止め、再発防止、消費者への周知徹底など。事業者名と内容が公表されます。
- 課徴金納付命令……優良誤認・有利誤認について、対象期間の対象商品の売上額の3%が算定基準。算定額が150万円未満(売上額5,000万円未満)の場合は納付を命じられません。
- 2024年10月1日施行の改正で追加された措置……事業者が自主的に是正計画を申し出る「確約手続」、優良誤認・有利誤認に対する直罰規定(100万円以下の罰金)、10年以内に違反を繰り返した場合の課徴金の割増(1.5倍)など。
- 都道府県による執行……国だけでなく都道府県知事も措置命令等を行えます。東京都によるインターネット広告の監視のように、自治体単位の監視も継続しています。
加えて実務上見落とせないのがモール・カート側の規約です。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングはいずれも価格表示や販促表現に独自ルールを設けており、法令に触れる前に出店規約違反として商品ページの停止やペナルティを受ける場合があります。法令とモール規約は別々に確認が必要で、厳しいほうに合わせるのが安全です。
チェックの仕組み化|担当者が変わっても回る運用にする
景表法対応で最も効くのは、知識を増やすことではなく公開前に必ず通る関門を1つ作ることです。表現は日々更新されるため、個人の注意力に依存した運用は必ず穴が空きます。
① 表現の棚卸しをする
商品ページ、バナー、メルマガ、SNSから「No.1」「最安」「通常価格」「送料無料」「返金保証」「本日限り」を全文検索します。使っている箇所の一覧を作るところから始めます。
② 根拠ファイルを1つにまとめる
表現ごとに、根拠となる資料(価格履歴CSV、調査データ、メーカー資料、スクリーンショット)をフォルダに集約します。根拠が出てこない表現は、この時点で書き換えます。
③ 公開前チェックリストを1枚作る
「元値の根拠はあるか/条件はスマホで同一画面に見えるか/期間表示は実際の運用と一致しているか」の3項目で十分です。項目が多いチェックリストは使われなくなります。
④ セール前後に価格を戻す運用を固定する
セール終了時に価格を戻す作業を、担当者の記憶ではなくカレンダーとタスクに落とします。戻し忘れは「継続的な値引き」を招き、次のセールの元値の根拠を失わせます。
⑤ 年1回、外部の目で点検する
社内だけで見続けると表現の麻痺が起きます。年1回は専門家や社外の担当者に主要ページを通読してもらいます。
EC参謀の見立て
景表法まわりで指摘を受ける店舗の多くは、悪意があったわけではなく「根拠を残す習慣がなかった」だけというのが実感です。逆に言えば、価格改定の履歴と調査データを残しておくだけで、リスクの大半は消えます。おすすめは、価格を変更したらその場でCSVを日付つきで保存する、という1動作だけを社内ルールにすること。表現ガイドラインを立派に作っても運用されませんが、この1動作なら続きます。表記まわりの土台としては特定商取引法に基づく表記もあわせて整えておくと、開業まわりの法務はひととおり形になります。
よくある質問
セール前に価格を戻せば、二重価格表示にはなりませんか?
「戻す」だけでは足りず、その価格で実際に相当な期間販売していた実績が必要です。消費者庁の考え方では、比較対照価格として過去の販売価格を用いる場合、セール開始時点からさかのぼって8週間のうち過半の期間(販売期間が8週間未満ならその期間の過半)で販売されていたこと、かつセール開始時点から2週間以上前に販売されていたことが目安とされています。そのため、セールの数日前に一時的に価格を戻しても、比較対照価格としての根拠にはなりにくいと考えられます。実務上は、通常価格での販売期間を十分に確保したうえでセールを設計し、価格改定の履歴を残しておくことが対策になります。なお、モール側の規約では法令より厳しい条件が設定されている場合があるため、出店先のガイドラインもあわせて確認してください。個別の表示が適法かどうかは事案ごとの判断になるため、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
プレゼントキャンペーンの賞品に上限はありますか?
あります。景品表示法は表示だけでなく景品類の最高額・総額にも上限を設けており、企画の種類によって基準が変わります。購入者全員にもれなく渡す「総付景品」の場合、取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の20%が景品類の最高額の目安です。抽選などで提供する「一般懸賞」の場合は、取引価額が5,000円未満なら取引価額の20倍、5,000円以上なら10万円が最高額で、景品類の総額は懸賞に係る売上予定総額の2%以内とされています。ECでよくある「購入者から抽選で1名様に高額商品プレゼント」は、取引価額との関係で上限を超えていないかの確認が必要です。なお、購入を条件としないSNSフォロー&リポスト型のキャンペーンは取引に付随しないため景品規制の対象外と整理されることが一般的ですが、応募条件の設計によって扱いが変わる場合があります。企画前に最新の基準を消費者庁の公表資料で確認し、金額が大きい場合は専門家に相談することをおすすめします。
「※個人の感想です」と書けば体験談を自由に載せられますか?
載せられません。打消し表示を付けたからといって、強調している内容の根拠が不要になるわけではないためです。体験談やレビューを商品の効果を示す目的で掲載する場合、その表示全体が「商品にはそうした効果がある」と伝えるものと受け取られれば、優良誤認表示として評価される可能性があります。実務では3点を意識してください。1つ目は、実在する購入者の内容をそのまま掲載し、編集で結論を強める加工をしないこと。2つ目は、効果を示す部分は体験談ではなく客観的な根拠(試験結果や公的な基準)で支えること。3つ目は、高評価を条件に特典を渡す設計にしないことです。レビュー依頼そのものは問題ありませんが、「星5をつけたら割引」のような条件付けは、表示の信頼性を損なううえ、モールの規約違反にもなり得ます。表現の適否に迷う場合は、消費者庁の公表資料を確認したうえで専門家にご相談ください。
「やることが多すぎて、手が回らない」——そんな時は。
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