アパレルECの始め方|洋服をネットで売るときの表示義務・サイズ・返品の基本

「手持ちの服やオリジナルのTシャツを、ネットで売ってみたい」。アパレルはネットショップで扱う人が多い商材ですが、食品や雑貨と比べると、品質表示のルール・サイズの伝え方・返品の受け方など、売り始める前に決めておきたいことが多い業種でもあります。この記事では、洋服をネットで売るときの基本を、消費者庁などの公式情報をもとに、準備の順番に沿って一緒に整理していきます。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 衣料品の多くは家庭用品品質表示法の対象で、繊維の組成と洗濯表示、それに表示者の名前と連絡先を、商品そのものに付ける必要があります。
- 試着できないネット販売では、SやMといった表記に加えて、同じルールで測った実寸を載せておくと、サイズ違いの返品や問い合わせが減りやすくなります。
- 返品やサイズ交換を受けるかどうかは、返品特約として先に決めて表示しておきます。表示がないと、受け取りから8日以内は送料お客様負担で返品できる扱いになります。
アパレルをネットで売る前に決めておきたい5つのこと
アパレルECの準備は、「表示・サイズ・返品・写真・在庫」の5つを、商品を載せる前に型として決めておくのが基本形です。1点ずつその場で考えると、商品数が増えたところで手が止まりやすくなります。
洋服は、同じ品番でも色とサイズで在庫が分かれ、写真の撮り方や採寸の基準がそろっていないとページごとに情報の粒度がばらつきます。さらに、品質表示は法律で決まった項目があり、返品のルールは書き方しだいで対応の負担が大きく変わります。カートやモールを選ぶ前に、この5つをどう回すかを一度紙に書き出しておくと、開店後の迷いが少なくなります。
洋服に必要な品質表示|家庭用品品質表示法の3つの項目
衣料品の多くは家庭用品品質表示法(所管:消費者庁)の対象で、「繊維の組成」「家庭洗濯等取扱方法(洗濯表示)」を表示し、そこに表示者の氏名または名称と、住所または電話番号を付けることが求められます(2026年10月時点・消費者庁「繊維製品の表示について」)。レインコートなど、はっ水性をうたう品目では、はっ水性の表示も対象になります。
| 表示する項目 | 主な決まり(概要) | 付け方 |
|---|---|---|
| 繊維の組成 | 使った繊維の名称と混用率を%で書く。部位ごとに分けて書く方法もある | 下げ札や紙での添付も可(外から確認できる場合) |
| 洗濯表示 | JIS L 0001の記号で表す(文字の「洗濯できません」ではなく記号) | 縫い付けなど、本体から容易に取れない方法 |
| 表示者名と連絡先 | 氏名または名称+住所または電話番号を、表示の近くに書く | 組成と洗濯を別々に付けるときは、それぞれに書く |
表示者になるのは、製造業者・販売業者・表示業者のいずれかです。自分で企画して工場に作ってもらう場合だけでなく、仕入れた服に手を加えて売る場合も注意が必要です。消費者庁のよくある質問では、無地のTシャツに染めやプリントをして売るときは、加工後の品質表示を新たに行うのが適切で、その表示に責任を持つ人が表示者になると案内されています。古着も、対象品目であれば組成と洗濯の表示が必要とされています。
海外から仕入れた服にも気をつけたいところです。外国語の組成表示や海外規格の洗濯記号のまま売ると、不適正表示となる場合があると、消費者庁のよくある質問で案内されています。なお、革や合成皮革を使ったコート・ズボンなどは、雑貨工業品品質表示規程で材料の種類(牛革など)の表示が定められています。対象品目の一覧は消費者庁のページで確認できます。
「原産国」は別の法律のルールです
原産国は家庭用品品質表示法の表示項目ではありませんが、景品表示法の「商品の原産国に関する不当な表示」で、原産国を判別しにくい表示が不当表示とされています。衣料品(下着・寝着・洋服などの外衣)では、縫製をした国が原産国とされています。海外で縫製した服に国内の地名だけを大きく出すような見せ方は避け、商品ページにも原産国をそのまま書いておくと安心です。最新は消費者庁や専門家でご確認ください。
規程が求めているのは製品そのものへの表示ですが、ネットでは購入前にタグを見られません。商品ページにも組成と洗濯の方法を同じ内容で載せておくと、「洗えますか」という問い合わせや、届いてからの「思っていた素材と違う」という返品を減らしやすくなります。
洗濯表示(JIS L 0001)の記号と、令和6年の改正
洗濯表示はJIS L 0001の記号で表し、洗濯・漂白・乾燥・アイロン・商業クリーニングの5つの基本記号を、この順に並べるのが基本です(2026年10月時点・消費者庁「洗濯表示(令和6年8月20日以降)」)。基本記号に、弱い処理を表す線や温度を表す数字・ドット、禁止を表す×などの付加記号を組み合わせます。
このJISは2024年8月20日に改正され、繊維製品品質表示規程も「JIS L 0001:2024」を引用する形に改められました。消費者庁のよくある質問によると、スチームなしでのアイロン仕上げを表す記号(記号番号511)が新設され、4つの記号のデザインが微修正されています。経過措置により、2025年8月19日までに改正前の記号で表示した商品は、そのままの表示で販売できるとされています。これからラベルを作る場合は、2024年版の記号データ(消費者庁のホームページからも入手可)を使うのが現実的です。
実務で迷いやすいのは、記号の省略です。記号は事業者の判断と責任で省略できますが、5つの基本記号のどれかが書かれていないと「その処理はすべてできる」という意味になります。洗濯できない服には「洗濯処理記号番号100」を使い、自然乾燥の記号は付けないことが誤解の防止につながる、とも案内されています。工場や仕入れ先から届いたラベルの内容が、実際の素材や加工と合っているかを、出品前に一度見ておくと安心です。
サイズ表記と採寸の書き方|返品を減らす「実寸」の出し方
サイズ(寸法)は家庭用品品質表示法の法定表示事項ではありませんが、ネットでは試着ができないため、S・M・Lなどの表記に加えて、同じルールで測った実寸を載せるのが返品を減らす基本形です。
JISには衣料のサイズに関する規格として、乳幼児用(L 4001)から成人男子用(L 4004)、成人女子用(L 4005)、靴下類(L 4007)までがあり、成人女子用は2023年3月20日に改正されています(日本産業標準調査会のJIS検索で確認)。ただ、同じ「M」でもブランドや型によって仕上がりの寸法は変わりやすく、お客様が頼りにするのは結局「この服は何cmか」です。採寸は、次の流れでルールにしておくとぶれにくくなります。
STEP1:測る箇所をアイテムごとに決める
トップスは着丈・身幅・肩幅・袖丈、パンツはウエスト・股上・股下・わたり・裾幅、スカートはウエスト・ヒップ・総丈など、アイテムの種類ごとに測る箇所を固定します。
STEP2:測り方の定義を図にして載せる
「身幅は脇下で平置きの端から端まで」のように測り方を決め、図と一緒にサイズガイドのページに掲載します。商品ページからそのページへリンクしておくと親切です。
STEP3:単位と誤差の注記をそろえる
単位はcmで統一し、「平置きで測っているため、1〜2cm前後の誤差が出ることがあります」のような注記を全商品に同じ文で入れます。誤差の幅は自店の実態に合わせて決めてください。
STEP4:着用の参考情報を添える
モデルやスタッフが着用している場合は、身長と着用サイズ、「ゆったりめ」「ジャストサイズ」などの着心地を書きます。手持ちの服の実寸と比べる方法を案内するのも効果的です。
返品・交換ポリシー|特定商取引法の返品特約をアパレル向けに決める
通信販売にはクーリング・オフがなく、返品特約を広告に表示していないと、商品を受け取った日から8日以内は、お客様が送料を負担して返品できる扱いになります(2026年10月時点・消費者庁「特定商取引法ガイド」通信販売)。アパレルでは「サイズ交換を受けるか」を含めて、返品特約を先に決めておくのが基本です。
返品特約では、返品の可否、返品できる期間などの条件、返品の送料をどちらが負担するかを表示します。ネット通販では、商品ページなどの広告に加えて、注文を確定する直前の最終確認画面にも表示することが求められています。アパレルで決めておきたいのは、たとえば次のような点です。
- サイズ交換を受けるか、受ける場合の期間と往復送料の負担
- タグを切ったもの、着用・洗濯したものの扱い
- セール品やアウトレット品を返品対象から外すか
- 肌着・水着・靴下など、衛生面から返品を受けにくいアイテムの扱い
- 不良品・誤配送のときの連絡先と期限(お客様都合の返品とは別に書く)
「サイズ交換は商品到着後7日以内にご連絡いただいた、タグ付き・未着用のものに限りお受けします。交換時の往復送料はお客様のご負担です。セール品は返品・交換の対象外です。」のように、対象・期間・状態・送料を1か所にまとめて書く。
「返品は原則お受けしません」とだけ書き、サイズ交換や不良品の扱いが分からない。特約がページの奥にしかなく、最終確認画面から確認できない。
上の例の「7日以内」は書き方を示すための仮の数字です。自店の運用に合う期間を決めてください。不良品や注文と違う商品が届いた場合は、返品特約で「返品不可」としていても、それを理由に断れる話ではない点に注意が必要です。特約の書き方の7項目や受付から返金までの流れは、ECの返品・交換対応の設計|規約の書き方と実務フローで詳しくまとめています。法令の最新の内容は、消費者庁や専門家でご確認ください。
商品写真とささげ|撮影・採寸・原稿を1つの流れにする
アパレルの商品ページは、撮影・採寸・原稿(ささげ)を1点ずつ同じ手順で回し、どの商品でも同じ情報がそろう状態にすることが、見やすさと作業の速さの両方につながります。
写真は、正面・背面・横からの全体に加えて、素材感が分かるアップ、ボタンやポケットなどのディテール、着用したときのシルエットがあると、試着できない不安を埋めやすくなります。色は画面によって見え方が変わるため、自然光に近い環境で撮り、原稿で「やや明るめに写っています」など見え方の補足を入れておくと、色違いによる返品の予防になります。撮影の段取りや光・背景の整え方は売れる商品写真の撮り方|スマホでできる基本テクニックと画像構成の型が参考になります。
原稿には、組成と洗濯の方法、原産国、実寸、着用モデルの身長と着用サイズ、透け感・伸縮性・裏地の有無などを、毎回同じ順番で書きます。項目をテンプレートにしておけば、担当者が変わっても情報の抜けが起きにくくなります。商品数が増えてきて、ささげが出品のボトルネックになってきたら、工程ごとの型化や外注の判断についてささげ業務(撮影・採寸・原稿)の効率化と外注の判断もあわせて読んでみてください。
在庫・SKU管理と季節MD|色×サイズで増える在庫をどう回すか
アパレルは1つの品番が色×サイズで複数のSKUに分かれるため、SKUコードの付け方と、季節の立ち上がりやセール時期から逆算した仕入れ計画を最初に決めておくと、在庫が回りやすくなります。
たとえば3色×4サイズのシャツなら、1品番で12SKUになります。SKUコードは「品番-色コード-サイズ」のように規則を決めておくと、カートやモール、倉庫のシステムをつないだときにも照合しやすくなります。色やサイズによって売れ方は偏りやすいため、最初の仕入れは全SKUを同じ数にそろえず、売れ筋になりやすいサイズを厚めにする考え方もあります。仕入れや撮影の段取りは、季節の動きから逆算して、次のような目安で組み立てておくと進めやすくなります。
| 時期(目安) | 売り場の動き | 準備しておきたいこと |
|---|---|---|
| 2〜3月 | 春物の立ち上がり。新生活の需要と重なる | 春物のささげを1〜2月中に終える |
| 6〜7月 | 夏物の本番と、夏のセール | セールで動かす品番と残す品番を分ける |
| 8〜9月 | 秋物の立ち上がり。残暑で動きが遅れやすい | 夏物の在庫の売り切り方を決める |
| 10〜12月 | 秋冬物・アウターの本番。年末の大型セール | アウターの採寸・素材情報を厚めにする |
| 1月 | 初売りと冬のセール | 春物への切り替え時期を決める |
上の表は例年の傾向からの目安で、気温や商材、販売するモールのイベントによって前後します。各モールのセール日程はEC販促カレンダーで確認できます。セールで「通常価格◯円」と並べて値引きを見せる場合は、景品表示法の二重価格のルールに沿った根拠が必要です。比較に使う価格の考え方は景品表示法のEC注意点|二重価格・打消し表示のNG例で確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 海外から仕入れた服は、付いているタグのまま売ってもよいですか?
A. 消費者庁のよくある質問では、日本の消費者向けに販売する輸入衣料品は、指定の用語による組成表示と、JIS L 0001:2024に基づく洗濯表示が必要とされ、海外の表示のまま売ると不適正表示となる場合があると案内されています(2026年10月時点)。直し方として、元の洗濯記号の上に日本の記号を縫い付ける方法や、別に縫い付ける方法が挙げられています。仕入れ値に表示の付け直しの手間と費用を含めて考えておくと安心です。詳しくは消費者庁や専門家にご確認ください。
Q. サイズ違いの交換や返品は、受けなければいけませんか?
A. 通信販売では、返品の可否や条件を返品特約として広告に表示していれば、基本的にその特約に沿って対応できます。表示がない場合は、商品を受け取った日から8日以内なら消費者が送料を負担して返品できるとされています(特定商取引法・2026年10月時点)。アパレルではサイズ交換の希望が出やすいため、受けるかどうか・期間・送料負担を先に決め、商品ページと最終確認画面に載せておくのが現実的です。不良品は特約とは別に考えます。
Q. 古着やプリントを加えたTシャツにも、組成や洗濯の表示は必要ですか?
A. 消費者庁のよくある質問では、古着や古着を組み合わせた商品も、対象品目であれば組成表示と洗濯表示が必要とされています。また無地のTシャツに染めやプリントなどの加工をする場合は、品質や洗い方が変わることがあるため、加工後の表示を新たに行うことが適切で、その表示に責任を持つ人が表示者になると案内されています(2026年10月時点)。個別の判断に迷うときは、消費者庁の窓口や専門家に確認してください。