食品のネット販売の基本|営業許可・食品表示・アレルギー表示の考え方

「手作りのお菓子をネットで売ってみたい」「地元の特産品を通販で全国に届けたい」——食品は、ECの中でもリピートが生まれやすい魅力的なジャンルです。一方で、雑貨や衣料と違って営業許可・食品表示・アレルギー表示・保存温度など、売り始める前に確認しておきたいルールが多いのも事実です。この記事では、食品をネットで売るときに押さえておきたい基本を、厚生労働省・消費者庁などの公表資料をもとに一つずつ整理します。個別の判断は品目や作り方で変わるため、管轄の保健所や専門家に確認しながら進めてください。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 営業許可が必要かどうかは、ネットか店頭かではなく、何をどう作り、どう保管して売るかで決まります。自分で製造するなら許可、仕入れて売るだけなら届出か届出不要になることが多く、最終判断は管轄の保健所に確認します。
- 食品表示の義務がかかるのはパッケージ側です。ECの商品ページは義務の対象外とされていますが、消費者庁はパッケージの表示に準じて情報を出すことを勧めており、アレルギー・期限・保存方法は特に目立つ位置に載せるのが安心です。
- 健康によいとうたう表現は、健康増進法や景品表示法、場合によっては医薬品のルールにも関わります。機能性表示食品は2026年9月から新しいルールが完全実施されているので、表現と仕入れ先の対応を合わせて確認しておきましょう。
食品のネット販売に営業許可は必要?判断の考え方
食品のネット販売で営業許可が必要かどうかは、「ネットで売るかどうか」ではなく「どんな食品を、どう作り、どう保管して売るか」で決まるのが基本です。食品衛生法では、食中毒などのリスクに応じて営業を「許可が必要な営業」「届出が必要な営業」「届出が不要な営業」に分けています。
この区分は2021年6月1日施行の改正で見直され、許可が必要な業種は32業種に再編されました。あわせて営業届出の制度が新しくでき、原則としてすべての食品等事業者にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が求められるようになっています(厚生労働省「食品衛生法の改正について」、2026年10月時点)。ネットショップでよくある形態を、厚生労働省の資料に沿って目安として並べると次のとおりです。
| 販売の形態(例) | 制度上の扱いの目安 | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| お菓子・総菜などを自分で製造して売る | 菓子製造業・そうざい製造業など「許可」の対象になることが多い | 施設基準を満たす作業場が必要。着工前に保健所へ相談 |
| 仕入れた食品を小分け・詰め直して売る | 「食品の小分け業」として許可の対象 | 詰め合わせの作り方によって扱いが変わる |
| 冷蔵・冷凍が必要な包装食品を仕入れて売る | 「届出」の対象 | 食品衛生責任者の氏名など届出内容の準備 |
| 常温で長く保存できる包装食品だけを仕入れて売る | 届出不要とされる | 扱う品目が増えたら区分を見直す |
| お酒を売る | 食品衛生法とは別に、酒税法の販売業免許が必要 | 販売する地域の範囲で免許の種類が変わる(所管は国税庁) |
届出は許可と違って施設の要件や更新がなく、許可には施設基準があります。お酒については、国税庁のQ&Aで、インターネットで継続的に酒類を販売する場合は酒類販売業免許が必要とされ、2都道府県以上の広い地域の消費者を対象にする場合は「通信販売酒類小売業免許」の対象になると案内されています。
⚠ 最終判断は管轄の保健所で
上の表は、厚生労働省の資料をもとにした大まかな目安です。同じ「お菓子」でも、原材料・製造工程・保存方法・詰め合わせの仕方によって必要な許可や届出が変わります。自治体によって運用の細部が異なることもあるため、作る品目・作業場の図面・販売方法をまとめて、管轄の保健所に事前に相談してください。最新の制度は厚生労働省・保健所の案内で確認をお願いします。
食品表示法の表示項目とネット販売での見せ方
食品表示法で表示が義務づけられているのは容器包装(パッケージ)側で、ECサイト上の掲載は食品表示基準の対象外とされています。ただ、消費者庁はネット販売向けに「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック」(2022年6月)を公表し、できるだけ食品表示基準に準じて情報提供することを基本方針に挙げています。
消費者庁の「早わかり食品表示ガイド」(令和7年4月版)では、加工食品の主な表示事項として次の項目が示されています。
- 名称、原材料名、添加物、原料原産地名
- 内容量(または固形量・内容総量)
- 消費期限または賞味期限、保存の方法
- 栄養成分の量と熱量
- 食品関連事業者の氏名・名称と住所、製造所の所在地と製造者の氏名・名称 など
このうちアレルゲンは原材料名・添加物の欄で表示します。生鮮食品は「名称」と「原産地」が基本の表示事項です。
ECサイトでの見せ方について、ガイドブックでは次のような工夫が例に挙がっています。
- 期限:個別の年月日を出せない場合は「到着日から◯日以上日持ちするものをお届け」といった期限残表示や、「製造日から◯日」といった期間表示
- 保存方法:「冷凍」「冷蔵」「常温」をマークやイラストで示し、商品一覧にもアイコンを出す
- アレルギー:目立つ文字や独立した欄、一覧表などで示す
- その他:商品の寸法・総重量、置き配の可否など、手に取れないネットならではの情報
ガイドブックでは、読み上げ機能を使う人のためにテキストでの情報提供も勧められています。パッケージ写真に加えて主要な項目を文字でも書いておくと、問い合わせも減りやすくなります。
アレルギー表示で押さえておきたいこと
アレルギー表示は、2026年10月時点で表示が義務の「特定原材料」9品目と、表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」20品目に分かれています(消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」)。
- 特定原材料(義務):えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生
- 特定原材料に準ずるもの(推奨):アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
くるみは2023年3月に特定原材料に追加され、経過措置が2025年3月31日で終わって表示が完全に義務になりました。カシューナッツは2026年4月1日に特定原材料に追加され、2年間の経過措置が設けられています。同じ日にピスタチオが「準ずるもの」に追加されました。ナッツを使う商品は、仕入れ先の切り替え状況とあわせて商品ページの表記も更新しておくと安心です。改定の経緯は改定の履歴でも確認できます。
もう一つ注意したいのが「入っているかもしれない」といった単なる可能性表示は認められていない点です。製造ラインでの混入(コンタミネーション)の可能性が排除できない場合は、「本品製造工場では◯◯を含む製品を生産しています」のような注意喚起表示が推奨されています。ECサイトでも、パッケージの表示と同じ言い回しで載せておくと誤解が起きにくくなります。
機能性表示食品・健康食品の表現で気をつけたいこと
健康によいことをうたう表現は、健康増進法・景品表示法、場合によっては医薬品のルール(医薬品医療機器等法)にも関わるため、食品ECの中で特に慎重さが求められる部分です。
機能性表示食品は、事業者が安全性と機能性の科学的根拠などを販売前に消費者庁長官へ届け出ることで、機能性を表示できる制度です。国が個別に許可したものではない点で、特定保健用食品(トクホ)とは異なります。消費者庁のパンフレットでは、販売予定日の60営業日前(場合によっては120営業日前)までに届け出る必要があると案内されています。また2026年9月1日からは、錠剤・カプセルなどサプリ形状の機能性表示食品へのGMP(製造・品質管理の基準)の適合と、見直し後の表示ルールが完全実施されています。詳しくは機能性表示食品の新ルール完全実施の速報にまとめています。
健康増進法第65条は、「何人も」食品として販売する物について健康保持増進効果等の著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させる表示をしてはならないと定めています。販売店やアフィリエイトの表現も対象になり得ます。消費者庁の資料をもとに、表現の考え方を比べると次のようになります。
機能性表示食品として届け出た内容どおりの機能性表示(「機能性関与成分◯◯には、△△する機能があることが報告されています」など)。原材料・産地・製法・味わいなど、事実として確認できる商品説明。
「治る」「予防する」など病気の診断・治療・予防をうたう表現。「糖尿病の方へ」のような特定の疾患の人に向けた表現。根拠を十分に説明できない「100%痩せる」のような表現。都合のよい体験談だけを並べる見せ方。
医薬品的な効能効果をうたうと、食品として売っていても医薬品医療機器等法の問題になる場合があります。「健康補助食品」などの名前で売る一般の食品は、機能性を表示できません。迷ったときは、消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。
温度帯配送と賞味期限の考え方
食品ECの配送は、商品の保存方法(常温・冷蔵・冷凍)に合った温度帯で届けることと、届いた時点で十分な期限が残っていることの2点が基本です。
食品表示のルールでは、品質が急速に劣化する食品には「消費期限」、それ以外の食品には「賞味期限」を表示します。製造から期限までが3か月を超える賞味期限は「年月」での表示も認められています。保存の方法は「直射日光を避け、常温で保存すること」「10℃以下で保存すること」のように、開封前の保存方法を食品の特性に応じて書きます。
ネット販売では注文から到着までに日数がかかるため、ECの商品ページでは「到着時点で何日以上の期限が残るか」を伝えると購入前の不安を減らしやすくなります。冷蔵・冷凍品の販売は営業届出の対象になる場合があるうえ、配送会社のクール便にはサイズや重量の上限、受け取りまでの日数の制約があります。料金・サイズの条件は各社で異なるため、最新は配送会社の公式ページで確認してください。
景品表示法・特定商取引法など、売り場全体のルール
食品に限らず、ネットショップの表示や販促には景品表示法と特定商取引法がかかります。食品ECで特に関わりやすいのは次の点です。
- 産地・品質の表示(景品表示法の優良誤認):「国産」「無添加」「手作り」など、実際と異なる表示や根拠のない表示は問題になり得ます。食品添加物の不使用表示については、消費者庁が「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を公表しています。
- 二重価格:「通常価格◯円」と比べる場合、その価格が直近8週間のうち過半の期間で販売されていたことなどが目安とされています(2026年10月時点)。
- 景品・ノベルティ:購入者全員へのおまけ(総付景品)は、取引価額1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の20%が上限です(2026年10月時点)。
- 特定商取引法の表記:事業者名・住所・連絡先、送料、返品の可否などをサイトに表示します。生鮮品や要冷蔵品は返品を受けにくいため、返品特約をはっきり書いておくことが大切です。
それぞれの詳しい書き方は景品表示法のEC注意点と特定商取引法の表記の書き方で解説しています。また、食料品の消費税は2027年4月1日から2年間1%に引き下げる方針が大綱として閣議決定されていますが、2026年10月1日時点で関連法案は成立していません。今後の動きは食料品の消費税引き下げの速報で追っています。
食品ECを始める前の準備ステップ
食品ECの準備は、「売り方を決める→許可・届出を確認する→表示を整える→配送を決める→売り場を作る」の順に進めると手戻りが少なくなります。
STEP1:売る商品と作り方・仕入れ方を決める
自社製造か、仕入れ販売か、小分けや詰め合わせをするか。常温・冷蔵・冷凍のどれで扱うかも書き出しておきます。
STEP2:管轄の保健所に許可・届出を相談する
STEP1の内容と作業場の情報を持って相談します。お酒を扱う場合は税務署で酒類販売業免許も確認します。
STEP3:食品表示を作る・確認する
名称・原材料・添加物・アレルゲン・期限・保存方法などをパッケージに表示し、仕入れ品は表示の内容を確認します。
STEP4:配送の温度帯と梱包を決める
クール便の条件、保冷資材、出荷できる曜日、到着時の期限残を決めて、商品ページに書く内容をそろえます。
STEP5:商品ページと販売ページの表記を整える
アレルギー・期限・保存方法を目立つ位置に載せ、特定商取引法の表記や返品条件を確認してから公開します。
公開後は、お中元・お歳暮・バレンタインなどギフトの時期に合わせた準備も効いてきます。年間の目安は販促カレンダーで確認できます。
よくある質問
Q. 自宅のキッチンで作ったお菓子をネットで売ることはできますか?
A. お菓子の製造は、食品衛生法で営業許可が必要な「菓子製造業」に当たるのが一般的です。許可には施設の基準があるため、住まいの台所をそのまま使えるか、別の作業場が必要になるかは、施設の状況を見て保健所が判断します。ネットで売るか店頭で売るかに関係なく製造の許可が論点になるので、作業場の図面や作る品目を持って、管轄の保健所に事前相談するのが現実的な進め方です。
Q. 仕入れた食品を販売するだけでも、保健所への届出は必要ですか?
A. 扱う食品と保管の仕方によって変わります。厚生労働省の資料では、常温で長期間保存しても品質の劣化による危害のおそれがない包装食品だけを売る場合は届出不要とされる一方、冷蔵・冷凍など温度管理が必要な包装食品の販売は届出の対象とされています。仕入れた食品を小分けして詰め直す場合は「食品の小分け業」として許可の対象になります。自店がどれに当たるかは、管轄の保健所で確認してください。
Q. ECの商品ページにも、パッケージと同じ食品表示を載せる義務はありますか?
A. 消費者庁のガイドブックでは、食品表示基準はECサイト上の食品表示情報の掲載を対象外としていると整理されています。義務がかかるのは容器包装への表示です。ただし同じガイドブックは、できるだけ食品表示基準に準じて情報を提供することを基本方針に挙げており、特にアレルゲン・期限・保存方法は購入前に見える位置に載せておくと安心です。広告としての表現には景品表示法や健康増進法も関わるため、最新は消費者庁の資料で確認してください。